研究課題/領域番号 |
16H06952
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寺尾 美香 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座講師 (40570669)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 角化細胞 / コルチゾール / コルチコステロン / 毛包幹細胞 / 毛周期 / マウス / 11β―HSD1 |
研究実績の概要 |
毛包は生涯にわたり成長と退縮を繰り返す成体唯一の組織である。この毛周期における色素産生や細胞内代謝は多分子の影響を受けるが、ホルモンや神経ペプチドもその一つである。コルチゾールは身体的・精神的ストレス時に副腎から産生され、代謝・血圧・血糖をコントロールする生体に必須のホルモンである。 申請者は表皮角化細胞におけるコルチゾール再活性化酵素である11β-hydroxysteroid dehydrogenase (11β-HSD1)の研究を行っており、11β-HSD1を発現し、不活性型のコルチゾンを活性型のコルチゾールに変換することにより、細胞の恒常性維持や増殖を調節していることを報告した。また皮膚がんにおいて発現が変動していることも報告した。 さらに毛包組織でも外毛根鞘細胞や毛球も11β―HSD1を発現することを確認している。また、申請者らが作成した皮膚角化細胞特異的11β―HSD1ノックアウトマウスを長期的に観察したところ、高齢マウスでは野生型にくらべて毛が多く維持されていることを見出した。 よって本研究ではマウスおよびヒトサンプルを用いて11β―HSD1の発現をより詳細に検討した。具体的には休止期、成長期、退行期の毛組織を採取し二重染色などにより発現細胞を同定した。また、毛周期と加齢による毛包の変化に及ぼす細胞内コルチゾール再活性化の影響をノックアウトマウスを用いて生体内で検討した。具体的には休止期皮膚を採取し、毛幹細胞をFACSで単離し、その数や特性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずはじめにマウス毛包の各周期における11β―HSD1を検討した。11β―HSD1の発現を検討した。結果、休止期毛包のBulge、成長期毛包のBulbに強く認めた。また二重染色でも休止期ではCD34陽性細胞と共染し、成長期ではLGR5ど共染がみられ同様の結果となった。 次に、高齢の11β―HSD1ノックアウトマウスは野生型マウスに比べて毛が多く維持されていることより、マウス毛包幹細胞(HFSC)数の検討を行った。若年(9週齢)、高齢(2.5才齢)皮膚より表皮を単離し、FACSにてCD34陽性、α6integrin陽性のHFSC数を検討した。野生型マウスに比べて11β―HSD1ノックアウトマウスでは若年マウスでも高齢マウスでもHFSC数の割合が多かった。このことより11β―HSD1ノックアウトマウスでは何らかの理由でHFSCが多く保たれていることがわかった。 次に、抜毛後の成長期誘導までの期間についての検討を行った。マウスに抜毛処理を行うと成長期が誘導される。11β―HSD1ノックアウトマウスと野生型マウスにおいて抜毛後の成長期誘導の期間を検討したところ、11β―HSD1ノックアウトマウスは野生型マウスより有意に成長期誘導が早くみられた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果より、11β―HSD1ノックアウトマウスでは抜毛後の成長期誘導が早いことが判明したために、今後は創傷治癒実験なども行う予定である。毛の再生は創傷治癒と過程が類似していることより、11β―HSD1ノックアウトマウスと野生型マウスより皮膚角化細胞を単離し、細胞遊走能の検討を行う予定である また、マウス毛包幹細胞(HFSC)数が11β―HSD1ノックアウトマウスで多くみられたことより、HFSCを単離してきてFACSにて休止期維持因子などの検討を行う予定である。さらに、組織より毛包幹細胞部をレーザーマイクロダイセクションで切り出しRNAを採取し同様の実験を行う予定である。
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