毛包は生涯にわたり成長と退縮を繰り返す成体唯一の組織であるが、この毛周期はコルチゾールをはじめとしたさまざまな内分泌ホルモンの影響を受ける。 申請者はコルチゾール再活性化酵素である11β-hydroxysteroid dehydrogenase (11β-HSD1)の研究を行っており、11β-HSD1を発現し、不活性型のコルチゾンを活性型のコルチゾールに変換することにより、細胞の恒常性維持や増殖を調節していることを報告した。また皮膚がんにおいて発現が変動していることも報告した。 さらに毛包組織でも外毛根鞘細胞や毛球も11β―HSD1を発現することを確認している。また、皮膚角化細胞特異的11β―HSD1ノックアウトマウスを長期的に観察したところ、高齢マウスでは野生型にくらべて毛が多く維持されていることを見出した。 よって本研究ではマウスおよびヒトサンプルを用いて11β―HSD1の発現をより詳細に検討し、また、毛周期と加齢による毛包の変化に及ぼす細胞内コルチゾール再活性化の影響をノックアウトマウスを用いて生体内で検討した。 昨年度までの結果で、11β―HSD1の発現が休止期毛包の幹細胞、成長期毛包の球部で強く発現していることがわかった。さらに、11β―HSD1ノックアウトマウスでは毛包幹細胞の数が多く、抜毛後の成長期誘導が亢進していることがわかった。よって、今年度はより詳細に毛包幹細胞をFACSで単離し、解析することとした。また、毛の再生は創傷治癒の過程と類似することが多いために、メカニズム解析として、創傷治癒実験を行うこととした。
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