平成28年度において、婦人科悪性腫瘍患者の新鮮腫瘍組織および末梢血のサンプルは、卵巣癌30症例、子宮体癌56症例、子宮頸癌7症例にて集積を得られた。子宮頸癌については、当初の計画より少なくなったが、これは検体が取得できそうな腫瘍がbulkyな症例が手術ではなく放射線治療など他治療を選択されることが多かったためである。卵巣癌に関して、当院での手術症例が少なく、他施設への検体譲渡を依頼して症例確保に努めている。子宮体癌に関しては当初の想定より若干症例数が少なかったが、この1年間で症例数は増えてきており次年度も合わせると症例の確保は可能と考えている。 これらの症例を用いて、T細胞リンパ球や骨髄球の免疫担当細胞表面発現分子の発現をフローサイトメーターにて解析を行った。制御性T細胞(Treg)は卵巣癌よりも子宮体癌で発現頻度が高い傾向にあった。卵巣癌に関しては、Tregを規定すると報告されているCD25分子の発現とは相関しないものがあることも判明した。また、卵巣癌において、Tregの発現は進行度との相関は高くなく、粘液性腺癌を除いては組織型との相関も認められなかった。子宮体癌においても進行度の相関は認められなかったが、組織型については集積した症例の大半は類内膜腺癌であったため他組織型との比較検討はまだ行えていない。 現在、Tregの表面活性マーカーの同定および新規治療標的因子の探索などを目的に卵巣癌・子宮体癌の代表例を用いてRNAシークエンスを行う準備を整えているところである。
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