現在までに卵巣がん185例、子宮体がん121例、子宮頚がん8例を集積した。 術前化学療法を施行していない初回手術の卵巣がん100例において、腫瘍浸潤T細胞における腫瘍免疫に関わる細胞表面分子をクラスター解析したところ、高発現している「Hot cluster」と低発現の「Cold cluster」の2群に大別された。このHot cluster群とCold cluster群において臨床項目の相関を解析したところ、単変量解析ではHotcluster群で漿液性腺癌と再発率が有意に多く、多変量解析では漿液性腺癌のみ有意差を認めた。手術完遂度や進行度との相関は認めなかった。予後解析では、Hot cluster群はCold cluster群に比べて無再発期間(PFS)は有意に短く、生存率(OS)では差を認めなかった。 卵巣がんにおいてもPD-1治療が注目を集めているが、PD-1の発現の有無のみで治療効果を予測することはできない。そこで、PD-1と同様、免疫抑制性因子とされているTim3に着目した。末梢血ではPD-1およびTim3を共発現するT細胞は認めなかったが、腫瘍浸潤T細胞においては同細胞を認めた。PD-1およびTim3を共発現する腫瘍浸潤T細胞が多いとPFSは有意差をもって短かった。PD-1およびTim3を共発現する腫瘍浸潤T細胞が高発現群では低発現群に比べて、漿液性腺癌の割合が有意に多く、進行癌(III期・IV期)が有意に多く、この共発現T細胞の機能が予後に関与している可能性が示唆された。細胞障害活性や増殖能、サイトカイン産生能でこれらの機能評価を行った。
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