ヒトの歯の象牙質より微小部分(1mg以下)より抽出したコラーゲン中に存在する糖化最終産物(AGEs)をAGEsの一種であるペントシジンの蛍光をターゲットとした高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量化に成功した。若年者、高齢者、2型糖尿病患者の象牙質の分析をしたところ、若年者、非糖尿病の高齢者、2型糖尿病患者とAGEsの蓄積量が多くなることがわかった。また糖尿病患者では歯髄内結石が多発することが報告されているが、患者では倫理的にも経時変化を観察するといった歯髄内石灰化メカニズムの解明は困難である。我々は遺伝系統的に血糖コントロール不良でレプチン遺伝子が機能低下している2型糖尿病モデルラット(SDT fatty rat)の歯を免疫染色法やマイクロCTで解析した。免疫染色においては象牙前室や歯周組織にペントシジンの蓄積見られた。マイクロCTでは週齢に相関して歯髄象牙質の肥厚、歯髄内結石が多くなっていることが認められた。この結果から高血糖値が維持されている状態でのAGEsが蓄積が歯髄内での石灰化や異所性石灰化を促進することが示唆された。歯髄細胞の初代培養も成功しており、AGEsの石灰化への関与が明らかにできると考えている。また2型糖尿病モデルラットの尾腱中のコラーゲンのAGEsのHPLC解析により、象牙質コラーゲン同様週齢に相関した蓄積が認められており、病的な靭帯の石灰化のメカニズム解明ができると考えている。
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