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2016 年度 実績報告書

重訳における誤訳の意味論的研究 ―多言語・多文化的対照翻訳方法の成立に向けて―

研究課題

研究課題/領域番号 16H06967
研究機関神戸大学

研究代表者

NGUYEN THANH・TAM  神戸大学, 国際文化学研究科, 学術研究員 (40782016)

研究期間 (年度) 2016-08-26 – 2018-03-31
キーワード意味論的誤訳 / メカニズム / SNSの機械翻訳
研究実績の概要

誤訳とは「誤って翻訳すること、また、間違った訳」(三省堂スーパー大辞林より)とされている。しかし、どのように誤ったか間違えたかは人々の感性によって異なり、客観的に修正するには困難である。誤訳に関する先行研究は殆ど特定の言語ペアの事例分析に留まり、理論上の穴は多いと考える。そこで、本研究はより一般的な翻訳の理論及び実践に利益をもたらすために、誤訳のメカニズムを明らかにし、その議論を多言語の翻訳法である重訳で検証する。
具体的な実績は、まず言語学の観点では、誤訳を音韻論的誤訳、形態論的誤訳、統語論的誤訳、意味論的誤訳、及び語用論的誤訳に分けた。その中で、意味論的誤訳すなわち言語表現だけを解釈することによって認識できる誤訳を中心に、検討する。意味論的誤訳は「意味が不明な訳」、「多義的意味が解釈できる訳」、及び「全く違う解釈を招く訳」に分類した。
一方、重訳においては、特に意味論的誤訳の分析に効果があることを明らかにした。事例として、原文の構文と字句を一対一の直訳のこととする機械翻訳である。重訳においては、起点テクスト(ST)と目標テクスト(TT)以外、媒介言語での翻訳(MT)も登場し、多文化・多言語間のコミュニケーションを明らかに観察できる。例えばSNSにおける機械翻訳では、 現地言語は一度英語に訳された後で、当該言語に重訳されることが多い。また、STとMTの両者を翻訳の原本として用い、起点言語の文化・媒介言語の文化・目標言語の文化との3つ文化の視点を考慮し、TTを作成できた翻訳方略は「三視点対照の翻訳法」と呼ぶことにした。これは重訳の要素を含まれながら、対照する翻訳が成り立つことによって、TTにおける翻訳のミスを抑制し、適切な翻訳を導く効果があると事例分析によって証明できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の一年目(平成28年度)の目標が達成できた。それは多言語・多文化的翻訳方略である三視点対照の翻訳法の概念・理論枠を整理確定した。また、異文化の翻訳、多言語使用の翻訳や機械翻訳及び誤訳に関する先行研究を検討し、誤訳分析の理論的な再検討を行った。ウェブサイトやフェイスブックから日本語・ベトナム語のテクストの事例 を100ぐらい取り上げ、 翻訳ソフトウェアやグーグル翻訳を使用し、ベトナム語及び日本語に訳した。次の段階では、訳出における意味論的な誤訳を考察する。すべての誤訳、訳漏れを取り出して上記の意味論的分類に分けるのを試みる。

今後の研究の推進方策

二年目(平成29年度)には、重訳の事例の数を増やし、誤訳の量的・質的分析を充実させたいと思う。それによって、翻訳言語・起点文化を問わず、多言語・多文化的翻訳方略をどのようにしたら多くの翻訳者が効率的に使用できるか、その方略を明らかにする。 意味論的観点から誤訳の基準を確定し、誤訳の分類を再検討することにする。具体的に機械翻訳を用い、抽出した誤訳の事例を今度「三視点対照の翻訳法」で再翻訳してみる。誤訳の種類ごとに誤訳をいかに減らすか克服できるのか、対策を検討する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] 重訳の再評価の試み-ベトナムにおける日本文学の重訳を中心に-2016

    • 著者名/発表者名
      グェン タン タム
    • 雑誌名

      「通訳翻訳研究への招待」

      巻: 16 ページ: 172-177

    • DOI

      http://honyakukenkyu.sakura.ne.jp/shotai_vol16/No_16-014-Nguyen.pdf

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] On finding a new definition of Indirect Translation2017

    • 著者名/発表者名
      NGUYEN THANHTAM
    • 学会等名
      The 8th Asian Translation Tradition Conference at SOAS
    • 発表場所
      ロンドン大学、イギリス
    • 年月日
      2017-07-05 – 2017-07-07
    • 国際学会
  • [学会発表] 重訳の実践運用:現状とその可能性2016

    • 著者名/発表者名
      グェン タン タム
    • 学会等名
      日本通訳翻訳学会第17回年次大会
    • 発表場所
      同志社大学
    • 年月日
      2016-09-10 – 2016-09-11
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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