先行研究において睡眠と介護負担感との直接的な関連については一定した結論が出ていない。本研究は在宅で介護をする家族介護者の客観的な測定による睡眠状況と介護負担感の直接的な関連及び家族介護者の睡眠と介護負担感に影響を与える家族介護者と要介護者の双方の身体的・心理的・社会的要因を調査した。 研究対象者は、在宅で介護保険サービスを利用する要介護者とその主たる家族介護者の23組46人とした。調査内容は、年齢、性別、要介護度、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、主観的Well-being、うつ(GDS15)、外出頻度などを調査開始時に聞き取り、2週間、介護負担感(J-ZBI_8)、睡眠(24時間活動量計を装着)、起床時血圧を測定した。倫理的配慮として神戸大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認を経て行った。 年齢は家族介護者66.9±11.0歳、要介護者82.7±8.5歳、家族介護者と要介護者ともに69.6%が女性であった。家族介護者の睡眠時間などには有意な男女差はなかった。介護負担感と有意な単相関を認めたのは、睡眠時間(r=-0.42;p<0.05)、入床時間(r=-0.44;p<0.05)、PSQI(r=0.62;p<0.01)、要介護者の外出頻度(r=-0.42;p<0.05)、要介護者の主観的Well-being(r=-0.50;p<0.05)であった。介護負担感を従属変数とした重回帰分析では、睡眠時間(β=-0.44;p<0.05)のみ有意に関連した(調整済みR2=0.45)。更に3ヶ月の追跡調査で要介護者が入院・死亡した群(4人)はベースラインの介護負担感が有意に高く、入床時間が有意に短く、PSQIが有意に悪く、要介護者の主観的Well-beingが低く、抑うつ傾向が高かった。 本研究により活動量計による客観的な睡眠時間の短縮は介護負担感の増大に関連することが明らかとなった。
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