研究課題
ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子に活性型変異を有する肺癌に対しては、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)が高い抗腫瘍効果を示すことが知られている。一方で、EGFR-TKIによる治療中に薬の効果がなくなる薬剤耐性が起きることが問題となっている。我々は本研究において、この薬剤耐性を獲得する過程におけるマイクロRNAを中心としたエピジェネティクス異常と、それに関係する分子を同定し、これらを実験的に制御することでEGFR-TKI に対する薬剤耐性の一部が克服できる可能性が示唆される知見を得た。肺癌細胞がEGFR-TKIに耐性化を示す過程で、上皮系細胞が間葉系細胞の性質を得て変化する上皮間葉移行(epithelial-to-mesenchymal transition; EMT)とよばれる現象が起きることが知られている。我々の研究によれば、EMTが起きる過程で、エピジェネティックな変化として、耐性化前後におけるマイクロRNA200ファミリーを中心としたマイクロRNA発現のダイナミックな変化が起きていることを突き止めていた。このマイクロRNA200ファミリーの変化に関与する分子を、肺癌細胞株に関する公共データベース等を用いて検討したところ、LIN28Bと呼ばれる分子が深く関与していることが判明した。我々の検討では、EMT特性を持つEGFR-TKI耐性細胞ではLIN28Bが過剰発現しており、マイクロRNA200を強制的に発現させることでEMT特性の消失と共にLIN28Bの発現が抑制されること、さらには癌細胞の増殖が抑制される可能性を明らかにした。一方で、これらの細胞においてLIN28Bの発現を実験的に抑制することでも癌細胞の増殖が抑制されることも明らかとなり、これらが新たな治療標的となり得ると考えられた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: 40847
10.1038/srep40847