研究実績の概要 |
口腔癌細胞はMidkineを多量に産生することが知られている.MidkineはPTPzを介して神経の興奮,すなわち癌性疼痛に与える可能性が示唆された. ヒト口腔正常組織と口腔癌組織切片におけるMidkine発現を免疫染色により検討すると口腔癌組織においてMidkine発現が増加していた. Midkine阻害薬を BALB/c-nuマウス骨髄腔に口腔癌細胞を移植し作成した癌骨破壊モデルマウスに投与すると非投与マウスと比較し疼痛閾値,脊髄後根神経節(DRG)における神経興奮マーカー発現(Erk, Crebのリン酸化)が減少した.この事から口腔癌細胞が産生するMidkineは知覚神経上のPTPzを介して癌性疼痛を誘発することが示唆された. リコンビナントMidkineを知覚神経細胞に添加するとErk,Crebのリン酸化が著名に亢進することが明らかになった。 軟エックス線写真撮影、CT撮影よりMidkine阻害薬は骨髄内での口腔癌細胞株の骨破壊性の増大を抑制することが明らかになった。またMidkine阻害薬はin vitroにて口腔癌細胞の細胞増殖、浸潤能、 VEGF依存の血管新生誘導能を濃度依存的に抑制することが示された。マウス全骨髄細胞を採取しビタミンD3, MCSFで刺激すると破骨細胞が誘導されるこれに対してMidkine阻害薬を添加すると破骨細胞形成が著名に抑制された。これは破骨細胞前駆細胞を直接抑制しているのか、支持細胞(ここでは骨芽細胞)を抑制することによって間接的に破骨細胞形成を抑制しているのかは不明であり、今後の検討課題である。
|