研究実績の概要 |
当該年度の研究成果は以下の通りである。まずはAbeらの論文を改変した方法(J Imunol Methods, 2013)に従い,歯周炎モデルマウスを作成した。具体的には野生型マウスを用いて,6-0絹糸をマウスの第一大臼歯部に結紮し,3日毎に注射針を用いて,絹糸に歯周病原菌の菌液を染みこませた。モデルマウスの作成から2週間後に,蛍光標識内包K1糖鎖リポソームを尾静脈から投与し,分子イメージングによって蛍光標識を検出することでリポソームの炎症指向性の確認と経時的な薬物動態を把握した。 その結果,蛍光標識内包K1糖鎖リポソームは歯周炎罹患部位に特異的に集積することが明らかとなった。 その後,住商ファーマインターナショナル株式会社(SPI)に所属する研究者の協力を受け,抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームを作成した。作成した抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームを歯周炎モデルマウスの尾静脈から投与し,一方で,炎症反応を分子イメージングするためのK1糖鎖とは異なる標的分子として,貪食細胞のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性によって発光するXenoLight Rediject Inflammation Probe を腹腔投与し,分子イメージングによって発光を検出することで,歯周組織の炎症反応を経時的に検証した。 その結果,抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームは同濃度の抗HMGB1抗体を単体投与した場合と比較して,より強力に歯周組織の炎症を抑制することが明らかとなった。 今後は,抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームが全身状態に及ぼす影響を検討することで,ナノDDSを応用する優位性を証明していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度では,来年度に行う予定であった抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームの作製と,その効果の抗炎症効果の検討を行うことができた。そして,仮定通りの良好な研究結果を得ることができた。よって,本研究は当初の計画以上に進展していると考える。
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