研究課題
我々は前年度までに、抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームが抗HMGB1抗体の単体投与と比較して、歯周炎組織に対するより強力な抗炎症作用を有していることを分子イメージング解析を用いて示した。その後の当該年度における研究成果は以下の通りである。詳細に抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームの抗炎症効果を検討するために、病理学的な組織解析を行った。抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームを投与した歯周炎モデルマウスの歯周組織では、上皮細胞とマクロファージにおけるHMGB1の核内から核外への移行が抑制された。これらは、抗HMGB1抗体単体での投与の際にみられる歯周組織での反応と同様の傾向である。一方で、抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームと抗HMGB1抗体単体での投与を比較して、歯槽骨吸収に有意な抑制効果はなかった。すなわち、抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームは抗HMGB1抗体単体での投与と同様の作用機序によって効果を発揮し、より強力に抗炎症作用を発揮する可能性が示唆された。しかし、今回の研究では抗HMGB1抗体内包K1糖鎖結合リポソームが特異的に歯周炎の進行を抑制するには至らなかった。本研究から、抗炎症作用を有する分子標的薬であるHMGB1を、薬物送達キャリアである薬剤内包炎症指向性リポソームを組み合わせることで、より効果的に薬理作用を発揮することが明らかとなった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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