研究課題
胃癌は免疫組織学的所見に基づいて腸型胃癌、胃型胃癌に大別され、両者の遺伝子・分子異常を含めた病態発生は大きく異なることが知られている。一方、近年オルガノイドと呼ばれる生体内の組織に類した構造のin vitroでの培養やCRISPR/Cas9による遺伝子編集など、革新的な技術が相次いで報告され、癌研究領域への応用が期待されている。本研究では、ヒト腸上皮化生及び固有胃腺からそれぞれオルガノイドを樹立し、CRISPR/Cas9を用いて実際の胃癌症例に好発する遺伝子異常を導入することで、腸型胃癌、胃型胃癌オルガノイドモデルを樹立することを目指す。腸型胃癌、胃型胃癌オルガノイドモデルを網羅的、体系的に解析し、腸型・胃型胃癌の発生・進展に必要十分な遺伝子異常を明らかにすることを目指す。本検討ではまず、腸型・胃型胃癌のオルガノイドモデルを樹立するにあたり、まず腸上皮化生、固有胃腺サンプルからオルガノイドを樹立した。次世代シークエンスを用いた胃癌の解析データを基盤として、腸上皮化生に対しAPC/CTNBB1/TP53/ FAT4/PIK3CA、固有胃腺に対してARID1A/RHOA/MLH1/TGFBR2/ACVR2Aの変異を導入すべく、ベクターの構築を行い、標的とする遺伝子に編集を加えることを確認している。現在、オルガノイドへの導入実験を進めており、詳細な解析を行なっている。また当初は来年度に予定していた項目ではあるが、実際の胃癌症例から5例分のオルガノイドの樹立に成功している。原発巣の遺伝子学的・分子学的形質がオルガノイドでも保たれていることを確認しており、胃がんの化学療法に用いられる代表的な薬剤(TS-1、オキサリプラチン、シスプラチン)や分子標的薬(ラムシルマブ、トラスツズマブ)に対する感受性の検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
正常胃底腺、腸上皮化生のオルガノイドの作成に成功しており、ゲノム編集に必要なベクターの作成を終えている。実際の細胞に形質導入して、タンパクレベルで発現に影響を与えるかどうかの確認や形質導入の効率に関する検討を現在進めており、概ね順調に進展していると考えている。加えて、次年度に予定していた項目である胃癌症例由来のオルガノイドの作成にも成功しており、先取って解析を進めることができている点においては、計画以上に進展していると考えている。
現行の計画で概ね問題なく進捗しており、計画の大きな変更は必要ないと考えている。しかしながら、遺伝子編集技術やオルガノイドの樹立に関しては、日々新しい技術が開発、報告されていることからも、学会参加等の直接の情報交換に加えて、google scholar alertなどのウェブツールも活用して、最新の情報の収集に努めたいと考えている。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件)
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