中国福建省西南部の客家土楼は、複数の宗族、あるいはひとつの大規模宗族によって建造されてきた。これらの土楼群の建造過程と宗族組織(漢族の父系出自組織)の再編は密接に関係している。本研究では、特定の土楼内の居住者が新たな土楼を建造する際、複数の房にまたがって資金や労働力を提供する状況を明らかにした。これまで宗族を議論する際に一般的であった、特定の房が不均衡に発展して財を形成する事例とは異なる状況を示すものである。また土楼居住者は、数世代同じ場所に居住することにより、特定祖先を選出する可能性があることを指摘した。土楼の建造年代が新しい場合は、この傾向は見られない。
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