研究課題/領域番号 |
16H07009
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
梶邑 匠彌 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (20780779)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | carbonyl reductase 1 / 子宮肉腫 / 間葉上皮転換 |
研究実績の概要 |
間葉系由来の腫瘍である子宮肉腫にCarbonyl reductase 1(CBR1)を過剰発現させ間葉系由来の腫瘍である子宮肉腫に間葉上皮転換METを誘導し、新たな治療戦略を探ることを目的として研究を開始した。子宮肉腫平滑筋細胞株SK-UT-1、子宮肉腫細胞株MES-SAにcarbonyl reductase 1(CBR1)のcDNAを導入し、CBR1安定発現株を作成した。子宮肉腫細胞株MES-SAはもともとCBR1の発現をほとんど認めない。CBR1の過剰発現をさせた場合の表現系の変化を最も効率的に評価できる可能性が高く、以後はMES-SAのCBR1強制発現株(MESSA-sense)の解析を行った。まずEMT関連因子の発現解析をRT-PCR、Western-blot法で行った。fibronectin、Vimentinなど一部の間葉系マーカーと、E-cadherin発現抑制転写因子であるSlugの発現は減少した。一方で上皮マーカーであるE-cadherinの発現はほとんど変化しなかった。CBR1強制発現ではE-cadherinの発現を促進する完全なMETは誘導できなかった。 次いで、MES-SA-senseにおける機能解析を行い、CBR1が浸潤能や遊走能などに影響を及ぼしうるかを評価した。MMP-zelatin zymographyではMMPの分泌能に変化は認めなかた。wound healing assayによって細胞の遊走能を評価したところ、MES-SA-senseにおいて遊走能が抑制された。 次にCBR1導入によって、生体内における腫瘍形成能に変化が起こるかを解析する為、作成した各クローンを重度免疫不全マウスに移植した。MES-SA-sense移植マウスではコントロールに比較して腫瘍形成能が低下した。現在、腫瘍形成能を低下させる要因について検討中である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
安定発現細胞株作成にあたって、導入細胞作成後に薬剤選別ののち、単一細胞選択を行なったが、細胞間での表現系のばらつきが多く、バリデーションを行うのに時間を要している。また、腫瘍形成能を調べる実験において、腫瘍形成には時間を要すること、一度に解析できるマウスの頭数には限りがあり、解析を分けて行なっており時間を要している。さらに、子宮肉腫平滑筋細胞株SKNではもともと腫瘍形成能が低く、nude miceに腫瘍を移植しても、腫瘍細胞が生着しない。移植を数度に分けて行ったが、結果腫瘍は形成させることができず、ここにも時間を要している。細胞株によってそもそも腫瘍形成を行わない細胞も含まれていることも時間を要する要因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初はCBR1の過剰発現のみでMETを誘導しようと試みた。実際にE-cadherin発現を抑制的に調節する転写因子Slugの発現はCBR1によって減少しているのにも関わらず、E-cadherinの発現は上昇していない。これはもともとE-cadherinの発現調節機構が別個にあり、その抑制が強力なためCBR1単独では発現をコントロールできない可能性がある。近年E-cadherinの調節にエピジェネティクス機構が関与していることが報告されている。あるいは子宮肉腫細胞株MES-SAにおいて強力なメチル化修飾が生じ、Eーcadherinの発現を抑制している可能性がある。脱メチル化を起こし、その上でCBR1の過剰発現をさせるなど、複合的な要素でMETを誘導できないかなど探る。 また、上皮系由来の腫瘍ではCBR1過剰発現によってin vivoで腫瘍形成を抑制しうることがすでに報告されている。肉腫においても同様の結果を得られており、MET以外にも腫瘍形成を抑制しうる因子があるかどうかを検証する。また、腫瘍形成抑制にCBR1が関与することが明らかになった場合、以前に報告したように、ドラッグデリバリーシステムによって、効果的にCBR1タンパクを生体内に取り入れ、腫瘍形成を抑制するシムテムの可能性を探る。
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