研究課題/領域番号 |
16H07010
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
磯村 聰子 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80437623)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 精神障害者 / 民生委員 / 地域の許容 / 近隣トラブル |
研究実績の概要 |
【目的】民生委員が捉えた精神障害者(以下、対象者とする)に対する地域の許容を阻む要因、促進する要因を明らかにすることを目的とした。 【方法】A県で活動経験を有する民生委員に対象者の支援事例について「支援上の困難感・負担感」等を語ってもらい、データは質的内容分析を行った。所属の倫理審査委員会の承認を得た。 【結果】10名の協力が得られた。10名のインタビュー時間の平均は68.2(45-91)分であった。50代1名、60代3名、70代5名、80代1名であった。民生委員平均経験年数は14(6-21)年であった。本報告では3事例の分析結果を示す。コアカテゴリとして導かれた【地域の許容を維持するための民生委員の支援】【対象者の生活と地域との摩擦】のうち、本報告では【対象者の生活と地域との摩擦】について述べる。以下、カテゴリを≪ ≫、サブカテゴリを< >、代表するデータを「 」で表記する。 対象者は≪気分変動≫、≪一方的な言動≫により、近隣住民と≪物理的距離の近さによる接触の多さ≫も引き金になり≪トラブルを起こ≫していた。一方で≪他者の目を気にする≫という特徴もあった。対象者は≪経済的に厳しい生活≫を送る上に≪精神障害と合わせて持病の療養≫もしており、≪継続的な支援を受ける≫ことが必要であった。通院、薬剤調整による≪病状の安定≫により、自身の≪生活を維持しようと努め≫、他者との≪関係を維持しようと努める≫側面もあった。 【考察】民生委員は、対象者に関わり続ける中で職務の限界とのジレンマも見られた。近隣住民とのトラブルが生じると、住民や対象者の双方の相談に乗っていた。民生委員が仲裁役として事態をおさめ、トラブルの深刻化を防ぐことで、地域の許容を促進していることが伺えた。今後、支援上の負担感や困難感解消の観点から分析を進めていくことが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度に、民生委員を対象としたインタビューのデータ収集が終える予定としていた。しかし、対象の選定を調整した事務局との協議の結果、民生委員の改選となった12月以降の時期で、かつ事務局および対象となる民生委員の状況など、調査の受け入れの体制が落ち着いてからデータ収集を開始することとなった。現在収集したデータは、目標サンプルの3分の1であることから、当初の計画よりもやや遅れた進捗となっているが、現在調整中、受け入れ検討中の事務局もあり、引き続き調査を実施していき、データ収集、分析を終える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、民生委員を対象にしたインタビュー調査を実施していく。目標サンプルについては当初32としていたが、依頼の調整の結果、15程度になる見込みである。 また量的調査をするための項目の精選を行っていく。文献検討、インタビュー調査から抽出した原案を基に、公衆衛生看護を専門とする研究者とのディスカッションを重ねる。全国調査に先立ち、小集団に対するプレテストを実施し、改善を重ねることとする。 本研究において、民生委員の職務上の負担感や、精神障害に関する知識を学ぶ機会のニーズが浮き彫りとなっていることも踏まえて、今後民生委員の活動を支援するためのプログラムの必要性と試行的なプログラム構成についても検討していく。
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