【目的】地域でトラブルを抱える精神障害者に対する民生委員の関わりから、地域の許容を阻む要因、促進する要因の示唆を得ることとした。本研究では「精神障害者」を、精神障害の診断のある者、迷惑行為の状況から精神症状の可能性がある者と定義した。 【方法】研究期間は平成29年2月~12月である。対象は、民生委員経験6年以上で近隣とのトラブルを抱える精神障害者への支援の経験を有する者とし個別に半構造化面接を実施し、近隣とのトラブルを抱える精神障害者への関わりを尋ねた。音声データから逐語録を作成し、質的帰納的に分析を行った。所属の倫理審査委員会にて承認を得て実施した。 【結果・考察】対象は15名であった。民生委員は平時から住民の声を聞き必要な機関につなげ調整をする≪民生委員活動と機能≫を活かし≪ケースへの個別支援≫を行っていた。その際≪関係機関および支援者との連携≫を活かし、≪近隣ネットワークと地域支援体制≫を活動によって強化していた。 近隣住民とのトラブルに発展すると、≪迷惑行為に困惑する近隣住民に対する民生委員の関わりと収束に向けてのはたらきかけ≫がなされていた。トラブルの背景には≪地域特有の関係性と精神障害者と近隣住民の交流≫が影響していることが示唆された。また≪民生委員の熱意と精神障害者へ関わる上での困難感≫の葛藤が浮き彫りとなった。≪民生委員活動の責任感と活動のしやすさを促進する要因≫には「精神障害者についての学習ニーズ」が含まれた。 精神障害者の迷惑行為により住民が不安を抱えることは、地域の許容を阻むことが示唆された。それに対して民生委員が不安を持つ住民への関わりや関係機関との連携は、精神障害者の地域生活の支援体制の強化につながることから、地域の許容が増している可能性が示唆された。民生委員の活動上の困難感を解消し、活動の質向上を目指した方策の具体化が今後の課題として挙げられる。
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