研究課題
本年度は,うつ病の再発をもたらす脆弱性に関連した神経基盤の解明するため,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,うつ病患者における幸せ気分と悲しみ気分喚起時における脳活動の検討を目的とした。具体的には,うつ病患者と健常者に対して,抑うつに関連する脳活動を惹起することが確認されている気分誘導課題を実施し,課題実施中の脳内の賦活部位と,脳領域間の機能的結合性の解析を行った。本研究で用いられた気分誘導課題は著者らのグループによって作成された課題であり,情動価を伴う記憶を想起させることで,特定の気分状態を効果的に誘導可能であることが実証されている(Yamamoto et al., BMC Psychiatry, 2017)。解析の結果,幸せ記憶や悲しみ記憶の想起時と,想起後の安静時において,うつ病患者は健常者に比べて,特異的な脳活動の賦活を示した。さらに,うつ病の発症回数が多いほど,幸せ記憶の想起困難や,幸せ気分の持続困難といった行動傾向が示された。そのため,これらの結果はうつ病に特異的な病態の神経基盤と密接に関連する可能性が示唆された。また,気分の変化をもたらす脳活動を検討するため,機能的結合性の時系列的変化に焦点をあてた解析に着手しており,予備的結果が得られている。これらの研究成果は,次年度に予定されている研究の円滑な遂行につながると考えられる。また,脆弱性の背景にある神経基盤に焦点を当てた介入方法を検討する上で,重要な基礎的知見を提起する可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
現在までに研究実施体制が確立され,本研究課題の目的であったうつ病の脆弱性の神経基盤に関する検討が行われてきた。
本研究課題を完遂するため,必要に応じてデータの追加を行いながら,これまで得られたデータの網羅的解析を着実に遂行する。また,本研究課題で得られた研究成果を迅速に発表していくことを予定している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
BMC psychiatry
巻: 17 ページ: 1-11
DOI 10.1186/s12888-017-1201-x
Neuropsychobiology
巻: 74 ページ: 69-77
10.1159/000453399
http://researchmap.jp/tetsuya_yamamoto