研究課題/領域番号 |
16H07012
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
山本 清義 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 特任助教 (80783521)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 核酸ナノテクノロジー / 核酸創薬 / ドラッグデリバリー |
研究実績の概要 |
核酸医薬は高い標的特異性など医薬として優れた性質を持つことから、次世代の医薬品として高い期待が寄せられ、その研究開発が国内外で精力的に行われている。しかし核酸医薬は生体内で速やかに分解され、失活してしまうなど未だ多くの問題が残っている。本研究課題では生体内で不安定な核酸医薬を分解から保護し、かつ目的の部位でのみ効率よく機能させる核酸医薬輸送技術を確立することを目的とし、核酸医薬分子と外部刺激をトリガーとして分解する核酸の自己組織化による新規構造を持った会合体FiNADsを構築し、その機能評価を行う。FiNADsは60個のY字型の構造体とそれらをつなぐ30個のリンカーから構築される球状のDNAナノ構造体である。Y字型構造体は核酸医薬配列を持つオリゴヌクレオチドと刺激に応答してDNA鎖を切断するトリガーを組み込んだ2本のオリゴヌクレオチドを用いて構築する。そこでまずフットボール型の構造体が実際に構築可能であるのか検証するため、まず全ての構造体配列をDNAで用意し、それらを用いて構造体の構築を行った。その結果、Y字型構造体とそれらからなるFiNADsの部分構造、五角形構造体の構築が確認された。 さらにより簡易な構造体である三角柱型構造体TP-AMOを設計し、FiNADのコンセプトである核酸医薬分子の保護と刺激による核酸医薬放出が実際に核酸ナノ構造体を用いて行えるかの確認を行った。その結果確かに核酸ナノ構造体を用いる事で、核酸医薬の構造分解耐性が高まることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の研究計画ではまずFiNADsのようなフットボール型ナノ構造体が申請者の設計した配列を用いて構築可能であるか検証を計画していた。しかし、フットボール型構造体の部分構造であるY字型構造体及び5つのY字型構造体からなる五角形構造体の構築を確認できたものの、五角形構造体をつなぎ合わせたフットボール型構造体の構築を確認することができなかった。この理由として、設計したフットボール型の構造体は一つの構造体中に多くの核酸医薬分子を搭載するために、構造体を構成する五角形構造の対称性が高くなっている。そのため平面の五角形をつなぎ合わされたフットボール型の構築がされなかったものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
フットボール型構造体の構築及び評価 平成28年度において、申請者は天然型のDNAオリゴヌクレオチドを用いてFiNADsの構造であるフットボール型構造体が設計した配列を用いて実際に構築可能であるか検討を行った。その結果、設計した配列を持つDNAオリゴヌクレオチドを用いてフットボール型構造体の部分構造であるY字型の構造体およびそれらから構築される五角形構造体の構築を確認した。しかし五角形構造体からのフットボール型構造体の構築を確認することができなかった。平成29年度の計画として、フットボール型構造体部分構造として三角錐のような三次元的な構造体を利用し、球状の構造体を設計及び条件の検討を行う。また構築した構造体の評価はPAGEの移動度の変化及び動的光散乱を用いた構造体サイズ測定によって行う。 単純な核酸ナノ構造体を用いたFiNADsのコンセプト評価 核酸ナノ構造体を用いた核酸医薬の保護、取り込み効率の向上そして光刺激による核酸医薬放出の制御というFiNADsの設計コンセプトをより単純な核酸ナノ構造体である三角柱型核酸ナノ構造体を用いて確認する。このために6分子の核酸医薬分子を保持可能な三角柱型構造体TP新たにを設計した。この核酸ナノ構造体TPに2’-OMe修飾したアンチmiRNA(AM21M)を導入し、核酸ナノ構造体に導入していない場合との酵素分解耐性、細胞導入効率の比較を行う。またTPを構成するDNAオリゴヌクレオチドへ光刺激応答性トリガーを導入し、光による核酸医薬放出の制御について検討を行う。
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