塩基配列依存的なオリゴヌクレオチド二重鎖形成を利用することで、配列の適切な設計により任意の形状をもったDNAナノ構造体を構築することが可能である。このDNAナノ構造体は高い熱的安定性やヌクレアーゼ分解耐性などドラッグデリバリーのキャリアとして優れた性質を示す。そこで本研究では核酸医薬分子の活性発現の時空間制御を目標としてフットボール型構造を持つDNAナノ構造体の構築を計画した。まず構造体の構築条件の検討を行い、2本鎖領域長を12塩基対としたオリゴヌクレオチドを用いることで、フットボール型構造体の部分構造であるY字型構造体およびそれから構築される五角形型の構造体の構築に成功した。しかし、五角形構造体を目的のフットボール型構造体とすることはできなかった。このためY字型構造体を三角錐型構造体とすることで、より構造体が構築されやすくなることを計画したが、同様に五角形構造体の構築に成功したものの、フットボール型構造体の構築を行うことはできなかった。また核酸医薬分子のヌクレアーゼによる分解からの保護が核酸ナノ構造体を用いて可能なのかどうか検証するため、新たに三角柱型構造体を設計した。結果三角柱型構造体を用いることで、核酸医薬分子のヌクレアーゼ分解耐性が20倍以上に向上することを見出した。さらに構造体を用いた核酸医薬分子の活性制御を行うため光刺激によってDNA鎖を切断するトリガーを合成した。結果、このトリガーを導入したオリゴヌクレオチドを用いて構築された構造体は1分という極めて短時間の365 nmの紫外線照射により構造体の崩壊を誘起し、核酸医薬を放出することを見出した。これらの結果より、 DNAナノ構造体を用いた外部刺激による活性の発現を制御可能な核酸医薬送達システムの実現が可能であることが示唆された。
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