研究課題
原発性肝癌の中でも特に肝内多発例、遠隔転移例は予後不良であり化学療法を含めて効果的な治療に乏しい。原発性肝癌とその由来である内胚葉は進展・分化の過程で共通してEMTを獲得することから、発生学の観点で得られた初期内胚葉分化における新しいmicroRNAの知見を癌研究に応用することは有用であると考えられ、今回、miR-xにより制御される内胚葉分化過程でのEMT獲得メカニズムが、潜在的に癌細胞に備わっており内胚様由来である原発性肝癌のEMT獲得の際に再現されるという仮説の下、新たなmicroRNAを介した新たな癌進展メカニズムの解明ならびに新規治療戦略を確立する目的で本研究を遂行している。正常内胚葉の発生機序における新たな知見を癌研究に移植することで、EMT獲得に対する新たな機序解明と対策について先駆的な知見を生み出し、特に現在有効な治療法に乏しい原発性肝癌の遠隔転移に対する新規治療法の開発につながることが期待される。また、実験方法に関して多くの報告では組織中や細胞株中の多様性に富む癌細胞全体を包括的に解析しているが、EMTが誘導される癌細胞は癌組織全体では少数であり、今回EMTを獲得した純粋な細胞分画を分取し実験対象にすることでより正確で信頼度の高い解析結果の獲得を実現する。さらに標的遺伝子の同定とその機能までを含めたmiR-Xの役割を明らかにすることは、癌細胞のEMT誘導メカニズムの新たな機序解明を実現するだけでなく、正常細胞の発生プロセスに主眼を置いた上で癌の理解を目指した革新的な癌研究分野の発展に寄与することが期待される。現在、肝内胆管癌におけるmiR-Xの発現を確認できており、癌進展や予後に及ぼす影響を解析している。
3: やや遅れている
平成28年度は細胞モデルにおけるEMT誘導とmiR-Xの発現パターンを解析し機能についても明らかにする計画であったが、モデルの確率に難渋したため。
EMT誘導時におけるmiR-Xの発現パターンの解析として、in vitroでのEMT誘導プロトコールの確立およびEMTに特異的な細胞分画の同定とセルソーターを用いた細胞分取、EMT獲得細胞におけるmiR-Xの発現を測定する。miR-Xの機能解析としてin vitroとin vivoのモデルにおけるmicroRNA mimic、inhibitorによるEMT誘導に与える影響を解析し、またmiR-Xの標的遺伝子の候補を抽出したうえで、ルシフェラーゼアッセイ、ウエスタンブロッティングにより転写レベルで標的となっていることを確認する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Anticancer Res.
巻: 37 ページ: 1169-1175
10.21873/anticanres.11430
J Gastroenterol Hepatol.
巻: 31 ページ: 256-264
10.1111/jgh.13069
巻: 36 ページ: 757-762