本研究では、飼料の性状による咀嚼性刺激が顎顔面骨格の成長発育に及ぼす影響を形態や機能的変化により比較検討し、食育効果の検証ならびに食育による顎骨への咀嚼性刺激の回復が顎顔面形態や顎口腔機能に及ぼす影響を評価し、食育指導の重要性に対し科学的な根拠を与えることを目的としている。 硬食群、軟食群、early catch-up群(5週目より軟食から硬食に変更)の3群のラット下顎骨を三次元的画像に構築し、形態計測を行った。その結果、三次元的形態をみると、軟食群の下顎骨は硬食群よりも全体的に小さく、下顎頭の発達が劣っていることが顕著に示されている。その一方で、early catch-up群は両群と比較したときに、明らかなサイズの違いや形態の特徴をとらえることは難しかった。計測所見として、以前の所見と同様に、軟食群は硬食群と比較して、下顎枝高が有意に小さく、下顎角は有意に大きかった。Early catch-up群では、硬食群と比較して、下顎枝高が有意に小さい値を示したものの、その他の計測項目では、硬食群および軟食群と比較しても有意な違いを示さなかった。よって、今回の結果では、5週目で軟食から硬食に変えたことにより、成長が硬食に追いつくことはなく、軟食と硬食の中間ほどの成長になる、という結果であった。しかし、有意差はなかったものの、下顎骨体長を示す結果では、硬食群よりもearly catch-up群のほうが大きな値となった。検体数を増やし、さらなる検討が必要と考える。また、下顎歯列の幅径を測定することも成長や現代の小児に歯列不正が起こりやすい原因の究明に繋がるかと考えた。 下顎骨に付着する咬筋、顎二腹筋、側頭筋の咀嚼筋の重量を測定し、3群間で比較してみるも、3群間で有意差を認めることはなかった。筋重量では、計測値にばらつきが目立ったため、検討ラット数を増やし、結果の信憑性を高める必要性がある。
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