本研究の目的は、高等教育機関において、発達障害の特性に配慮した災害時の避難支援システムを構築することである。前年度に実施した全国の国公立大学を対象とした障害のある学生に対する防災対策の実態調査結果を基に、平成29年度は以下の研究を行った。 初めに、(1)大学教職員を対象とした障害学生支援に関する研修会において、発達障害のある学生への対応経験、発達障害の理解度、授業中に災害が発生した場合の発達障害のある学生への対応等についてアンケート調査を実施した。その結果、授業中に災害が発生した場合の懸念事項として、発達障害のある学生がパニックになるのではないか、避難支援の方法が分からない、個別対応が困難である等が挙げられた。次に、(2)発達障害のある学生を対象とした防災教育教材の作成を行った。この教材は、地震を想定し、大学の障害学生支援担当部署において防災教育および防災訓練を実施するためのものである。作成した教材の効果を検討するために、発達障害のある学生を対象に、防災教育および防災訓練を実施した。その結果、地震発生後の対処行動や安全な避難行動について学生の理解が深まり、災害時に周囲に援助要請することに関して、実行可能性が高まった。防災訓練に参加した学生の地震に対する不安は高いまま維持されたが、気持ちが動揺してもコントロールすることができるという自己効力感が高まった。最後に、発達障害のある学生を対象に実施した防災訓練を基に、(3)障害学生支援担当部署における教職員用の防災マニュアルを作成し、平時の対応および災害時の対応についてまとめた。
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