研究課題/領域番号 |
16H07025
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
越智 俊元 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (10571086)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | キメラ抗原受容体 / 免疫グロブリン遺伝子ライブラリー / NY-ESO-1 |
研究実績の概要 |
HLA-A*02:01/NY-ESO-1_157 (A2/NY-ESO-1157)特異的ヒト抗体 (clone 3M4E5)の軽鎖 (L)および重鎖 (H)可変領域遺伝子配列をもとに、A2/NY-ESO-1157特異的キメラ抗原受容体 (3M4E5 scFv-CD28-CD3z: 3M4E5-CAR)を作成した。LHの順で連結した3M4E5LH-CARと、HLの順で連結した3M4E5HL-CARとを両方作成しT細胞に遺伝子導入した。どちらのCAR導入T細胞もA2/NY-ESO-1157テトラマーで染色され (n=5)、A2拘束性にNY-ESO-1157ペプチドを認識した。さらに、3M4E5LH-CAR導入T細胞はA2/NY-ESO-1157を内在性に発現する標的細胞およびヒト骨髄腫細胞を認識し、各種サイトカインを産生した。 続いて、健常人ヒト末梢血B細胞を回収し、5’RACE PCR法を用いて免疫グロブリンLおよびH可変領域遺伝子をクローニングした。LHおよびHL-CAR scFv配列内の3M4E5H遺伝子もしくは3M4E5L遺伝子を固定して、片方をLもしくはH可変領域遺伝子ライブラリーに置換することで、A2/NY-ESO-1157 CARライブラリーを作成した。これらのCARライブラリーを末梢血T細胞に遺伝子導入して作成したCAR-T細胞を抗原特異的に刺激すると、A2/NY-ESO-1157特異的CAR-T細胞が増幅してくることをテトラマー法により見出した。続いて、A2/NY-ESO-1157 テトラマー陽性CAR-T細胞よりその可変領域遺伝子をクローニングしたところ、新規CAR遺伝子の同定に成功した。新たに同定したH可変領域遺伝子であるH1と既存の3M4E5LからなるH1/3M4E5L-CAR導入T細胞は、A2/NY-ESO-1157を特異的に認識することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、我々はA2/NY-ESO-1_157特異的キメラ抗原受容体 (3M4E5-CAR)をモデルとして、scFv可変領域遺伝子の片方をヒト免疫グロブリン可変領域遺伝子ライブラリーに置換することで、新たにA2/NY-ESO-1_157特異的重鎖可変領域遺伝子であるH1を同定した。このことは、我々の研究計画が実行可能であることを裏付けるものであり、その意義は極めて大きいものであると考えられる。また、本研究課題全体における進捗状況としても、予定した計画に準じて実施し研究成果を得ており、2017年度の研究計画についても十分に実施可能なものである。従って現在までの進捗状況に滞りはなく、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果を基にして、さらに研究を発展させる。まず複数のドナーより健常人/患者B細胞を回収し、ドナー毎に免疫グロブリン可変領域遺伝子ライブラリーを作成して、CARライブラリーの拡大を図る。同時に、新たに同定した重鎖可変領域遺伝子であるH1を固定して、軽鎖可変領域ライブラリーより新たな軽鎖遺伝子を複数同定することで、全く新しいA2/NY-ESO-1_157特異的CARの同定に繋げる。さらに、新たに同定できたA2/NY-ESO-1_157特異的CARを、内在性TCR遺伝子を欠損するJurkat 76細胞株にそれぞれ別個に遺伝子導入する。A2/NY-ESO-1_157テトラマーとIL-2 ELISA法とを利用して、単一クローンとしての標的特異性を詳細に解析する。また、NY-ESO-1_157ペプチドのアミノ酸配列の一部をアラニンに置換して、同定したA2/NY-ESO-1_157特異的CARが認識しうる類似ペプチドの探索を行い、正常細胞に対する潜在的交差反応性にも配慮することで安全性の担保に務める。このような解析を通して、臨床応用に最適なA2/NY-ESO-1_157特異的CAR遺伝子の同定に繋げることを目標とする。 さらに本研究で得られた知見を、別の抗原特異的CARにも発展的に応用する。具体的には、現在難治性B細胞性腫瘍で臨床試験が進められているCD19特異的CAR (FMC63-CAR)を利用する。scFv配列内可変領域遺伝子の片方を同様にヒト免疫グロブリン可変領域遺伝子ライブラリーに置換して、新たなヒト型CD19-CARの同定に繋げて、本研究課題の汎用性を確認したい。
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