水深1000 m以深の深海底に普遍的に存在する化学堆積岩、「マンガン団塊」(径: >1 cm)の形成メカニズムを理解するために、本研究では微小な団塊(マイクロマンガンノジュール、径: <1 mm)に注目した。本研究の目的は、マイクロマンガンノジュールの内部構造観察や元素分析を行うことで、それが形成した海洋環境を特定すること。そして、その結果を通常の大きな団塊と対比し、古環境復元につなげることである。 昨年度実施した研磨薄片の観察に加え、本年度はマイクロフォーカスX線CTスキャナを利用して、マイクロマンガンノジュールの内部構造および密度変化の観測を実施した。その結果、マイクロマンガンノジュールの内部には低密度の核が存在し、そこから外側に向かって同心円状に鉄・マンガン酸化物層が成長していることが明らかになった。この構造は、通常の大きな団塊と酷似している。一方、堆積物の採取深度によって、マイクロマンガンノジュールの回収数や内部構造などに、大きな違いを見出すことはできなかった。 併せて一部の試料に対して、エネルギー分散形X線分析や蛍光X線分析による元素分析を実施した。鉄と比較してマンガンの濃度が高い傾向が見られたことから、この試料はやや還元的な海洋環境で形成されたことが示唆された。 以上の成果については、国内の研究集会において、学会発表を行った。また関連研究として、マンガン団塊から溶出する重金属に関する研究を実施し、国際誌に共著論文を発表した。
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