平成28年度では、「親水部に多数の化学反応点(2級アミノ基)を有する界面活性型色素」の合成に成功していたが、その自己組織化構造の化学反応性が低く、架橋剤による構造安定化が困難であるという課題があった。平成29年度は、同課題の克服を目指し、親水部の2級アミノ基に対し、より反応性の高いアジド基を導入した。さらに、疎水部の色素には高い発光性を有する四角酸誘導体を用いていたが、これに対し様々な長さのアルキル鎖を導入し、より安定な自己組織化構造を実現する疎水部を探索した。 結果としては、ポリ(2-エチル―2-オキサゾリン)(約30量体+5量体のアジド部位)に対し、ドデシル基を有する四角酸を導入して界面活性剤とした際に、最も明確な臨界ミセル濃度および疎水部の色素の凝集による蛍光強度現象が見られた。この自己組織化構造は、ナノエマルションやリポソームなどの存在下では容易に分散してしまうが、アジド基に対しグルダルアルデヒドのような架橋剤を作用させることで強固な構造安定性を獲得することができた。一方、架橋反応を起こさなかった一部の界面活性剤が自己組織化を起こさないまま系中に存在することとなり、その除去、すなわち「自己組織化構造の精製」という課題が残ることとなった。今のところ明確な精製方法を見出せてはいないが、これを解決することにより、多彩な表面修飾とそれに伴う光機能を有する蛍光性界面活性剤が開発できると考えている。
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