研究課題/領域番号 |
16H07032
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
昆 竜矢 九州大学, 鉄鋼リサーチセンター, 特任助教 (00780199)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 反応・分離工学 / 流動層 / DEM-CFDモデル / CO2吸着 |
研究実績の概要 |
日本国内のエネルギー需給を取りまく環境は、2011年の東日本大震災以降大きく変化し、未だ明確な指針が定まっていない。震災以前電力供給の約10%を占めていた原子力発電所での発電が未だ制限された状態であり、不足した電力供給の補填は大部分が化石エネルギーを利用する火力発電によって行われているのが現状である。この火力発電では二酸化炭素の排出量が多く、近年の二酸化炭素排出量の削減の流れとは逆行する形となっている。よって本研究では二酸化炭素吸着や排ガス処理などに用いられる流動層を対象に流動層内メゾスコピック反応解析モデルの構築を行い、反応および吸着工程の最適化および支配因子の解明を目的とする。数値解析モデルの構成は、粉体の挙動については粒子ごとに離散要素法 (Discrete Element Method, DEM) を用いて粒子ごとの運動および反応の解析を行う。気体の運動については、Euler座標系のCFDを用いて数値計算を行う。これらの計算手法を組み合わせることで、ミクロスケールである粉体の運動および反応とマクロスケールでの気体の運動および反応を解析することができる。本研究の達成により、化学プラントでの反応プロセスおよび廃棄物の処理の効率化が期待でき、環境問題およびエネルギー問題の解決にひいては、循環型社会の構築に貢献できる。当該年度においては、数値解析モデルの基礎部分の構築を行い、二酸化炭素吸着に伴う発熱および固気間伝熱の再現を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては、数値解析モデルの基礎部分の構築を行った。数値解析モデルの構成は、粉体の挙動については粒子ごとに離散要素法 (Discrete Element Method, DEM) を用いて粒子ごとの運動および反応の解析を行う。気体の運動については、Euler座標系のCFDを用いて数値計算を行う。これらの計算手法を組み合わせることで、ミクロスケールである粉体の運動および反応とマクロスケールでの気体の運動および反応を解析することができる。まず初めに、実験スケールに合わせて、DEM-CFDモデルの構築を行った。CFDの計算方法としてSIMPLE法とSMAC法の両者を導入し検討を行った。検討よりSMAC法の方がより流動層解析に適していることが確認され以降のモデルでは、SMAC法を採用した。次に数値解析モデルに対して、CO2吸着の際の発熱および気相との熱交換を導入した。固定層の条件でガスの流入を行った場合、層内および気相の温度分布は実験と近い結果を示した。以上の事から、当該年度の目標である数値解析モデルの基礎部分の構築および実験との比較を行い、良好な計算精度が得られたことから、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては、さらなる計算精度の向上に加えて計算対象および計算領域の拡大に取り組む。計算精度については、構築したモデルと実験で得られる情報との比較を行うことでより、精度のよいモデルの選択および構築を行う。計算対象については、吸着だけでなく界面でおきる気体の分解や、粉体のガス化についても解析を行えるよう、反応速度論に基づきそれぞれの反応もモデルの構築に取り組む。計算領域の拡大については、解析モデルの高速化がそのまま計算領域の拡大につながるため、並列化をはじめとした手法の導入を行う。解析領域については、ラボスケールからパイロットプラント、最終的には実プラントスケールでの解析を目指す。並列化の手法としてまずOpenMPの導入を行う。OpenMPは共有メモリ型並列計算機で用いられる並列化手法であり、主に単一の計算機での計算の並列化に用いられる。次に導入に取り組むのは、MPIの導入である。MPIは分散メモリ型並列計算機、つまり複数の計算機間での行う計算の並列化手法である。OpenMPと比べ、複数の計算機が必要となり、また対象とする系によっては計算機間の通信速度が問題となり、十分な効率が得られない場合もあるため、計算対象に合わせて適切な計算条件および環境を設定する必要がある。
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