クロマチン状態は個々の細胞ごとに異なり、さらに分化過程などにおいてダイナミックに変化することが知られている。卵子は次世代を残すという特殊な性質をもった細胞であるが、その性質がクロマチンレベルでどのように制御されているのかはほとんど明らかになっていない。そこで、本研究では、卵子の異なる発生段階におけるクロマチン状態を明らかにすることを目指した。特に本研究では、オープンクロマチンとよばれる、転写因子などのアクセス可能な制御領域をゲノムワイドに調べることにした。 本年度は、オープンクロマチン領域をゲノムワイドに検出するための手法であるATAC-seq法を卵子サンプルに適用させるため、その方法の最適化を目指した。ATAC-seqはTn5トランスポザーゼにより、外来のDNA配列をオープンクロマチン領域に挿入することが基盤となるが、その後のサンプル調製の際にはTn5トランスポザーゼをDNAから十分に解離させる必要がある。その方法として、SDSとEDTAによる方法のどちらがよいかを検討したところ、EDTAによる解離のほうが、その後のサンプル調製への影響が少ないことがわかった。SDSを用いた場合は、その後のPCRの効率にばらつきが多かったが、EDTAでは安定した結果が得ることができた。次年度では、少細胞数サンプルにおいて最適化した方法が再現性よく機能するかを検討し、卵子サンプルへ適用することを目指す。
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