研究課題/領域番号 |
16H07045
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
門田 慧奈 九州大学, 理学研究院, 特任助教 (30782255)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | シロイヌナズナエコタイプ / 窒素 / 二酸化炭素 |
研究実績の概要 |
まずシロイヌナズナエコタイプの窒素応答性の大規模解析を行うために最適な生育条件を探った。育成培地の組成、植物育成室の光条件、温度等を厳密に検討した結果、植物体が健康に生育する範囲内で、エコタイプ間の応答性の差が出る条件を見いだした。この生育条件を用いて、低窒素育成時のバイオマスを指標にして、シロイヌナズナエコタイプ集団の窒素応答性を比較した。まず、以前に気孔コンダクタンスを指標にして気孔のCO2応答性を順位付けしたエコタイプ(PLoS ONE, 2015)を中心とした57系統について低窒素応答性を調査し、高CO2応答性との間に相関があるかを調べた。その結果、高CO2応答性と低窒素応答性の間には弱い正の相関がある可能性が示唆された。次に解析数を240系統まで大幅に増やし、エコタイプの低窒素応答性を調査した。その結果、シロイヌナズナの標準系統であるColumbia-0(Col-0)と比べて、低窒素育成時に高いバイオマスを示す系統を発見した。またこの系統(研究を進めるにあたり独自に設定したエコタイプ管理番号において、E244と呼称)では、主根長・側根数においても低窒素育成時にCol-0と有意な差が見られた。さらにE244系統のCO2応答性をサーモグラフィおよび蒸散測定装置を用いて解析した結果、Col-0と比べて高いCO2取り込み能力をもつことが示唆された。このことから、E244系統はCol-0とは異なるCO2・窒素応答性をもつと考えられた。またその他にも特徴的なCO2・窒素応答性を示す系統を複数発見した。これらの成果については、国内外の学会において意欲的に発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
窒素応答とCO2応答の間にある相関関係を、シロイヌナズナエコタイプ集団の解析を通して確認でき、また特徴的なCO2・窒素応答性を示すシロイヌナズナエコタイプを見いだすことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
E244系統を中心とした解析を行い、シロイヌナズナにおけるCO2・窒素応答性のクロストークを探る。まず、育成培地の窒素濃度を変えたときの、植物体内の炭素・窒素含量を測定する。また、マイクロアレイおよびリアルタイムRT-PCRによって、CO2・窒素関連の遺伝子に発現変動が見られるか調査する。さらにCol-0系統とのかけあわせを行い、QTLマッピングを行うための準備を進める。
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