心筋梗塞後心不全モデルおよび拡張型心筋症モデルマウスに加え、大動脈縮窄圧負荷モデルでの心筋組織における低酸素誘導因子(Hypoxia-inducible factor-1α (Hif-1α))とREDD1 (DDIT4)の発現を解析した。これら全ての心不全モデルにおける不全心筋において、転写因子であるHif-1αの発現は増加をしていた。さらにreal-time PCR法によりHif-1αで転写制御される複数の遺伝子の発現が上昇していたことから、心不全の心筋細胞は低酸素環境に晒されていることが示唆された。またREDD1についてもWestern blotおよびreal-time PCRによる発現の評価を行ったところ、同分子が全ての心不全モデルにおいて著明に増加していた。これらの結果から、心不全の原因に関わらず不全心筋においては低酸素応答としてREDD1の発現が上昇しており、心不全の進展において何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。 ラット新生仔単離心筋細胞を用いて、REDD1の心筋細胞における機能解析を行った。単離心筋細胞を1%低酸素環境にて培養することにより、Hif-1αとともにREDD1のmRNAおよび蛋白レベルでの発現が誘導された。1%低酸素環境下での24時間の培養は細胞死を引き起こすが、siRNAによりREDD1をノックダウンすることで、低酸素環境下にて誘導される細胞死を増悪させた。低酸素環境下での培養によりmTOR活性は強く抑制されるが、REDD1のノックダウンではmTOR活性が上昇しており、これらの結果から低酸素環境下でのmTOR活性化は細胞傷害につながることが示唆された。 さらに前年度に続き、ノックアウトマウスの作成を継続し、REDD1ノックアウトマウス(F1)を樹立した。
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