研究実績の概要 |
近年、ランビエ傍絞輪部に局在する細胞結合膜蛋白neurofascin (NF)155に対するIgG4クラスの自己抗体が慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)の一部で陽性になることが明らかとなってきた。IgG4はin vivoでhalf molecular exchangeを起こすため、生体では1価の抗体として存在している。また補体結合活性がないため、認識する蛋白間相互作用を阻害することで病原性を発揮すると考えられている。本研究では抗NF155抗体陽性CIDP患者のリンパ球を採取し、全RNAからcDNAを調製後、免疫ファージ抗体ライブラリーを作成する。その後、ファージディスプレイ法を用いてヒトNF155特異的な一本鎖フラグメント(single chain variable fragment, scFv)を作製する。 平成29年年度は昨年度に構築した、抗NF155抗体CIDP症例の末梢血リンパ球由来の抗体ファージライブラリーを用いて、ヒトNF155に対するファージを選別するためパニングを行った。パニングに際しては、抗NF155抗体のエピトープと推察される部位を強制発現させたHEK細胞を用いて抗体ファージライブラリを直接反応させる細胞パニング法を用いた。合計3回パニングを行った結果、ヒトNF155に結合するScFvを有するクローンが十分濃縮されていることを確認した。15クローンを採取し、そのうち13クローンがヒトNF155に結合することを確認した。また、各クローンのScFvの塩基配列を確認したところ、その多くが類似する組み合わせであることを確認した。ヒトNF155に高親和性のScFvが単離されている可能性が高い。今後は今回得られたファージクローンより、ScFvを単利して動物に投与することで、抗NF155抗体陽性CIDP症例でみられる脱髄所見を呈するのか確認していく。
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