研究実績の概要 |
背景として肝細胞癌(HCC)切除標本において、一層の類洞様血管構造で囲まれる特殊な血管パターン(vessels that encapsulated tumor clusters; VETC)が存在するHCCサブタイプで脈管浸潤が起こりやすく、術後無再発生存率が不良であり、EMT(Epithelial-Mesenchymal transition)非依存的に血行性転移及び遠隔転移を来すためと報告された。HCCに対する肝移植後の検討は未だなされていない。今回の目的は類洞様血管構造をもつHCCと臨床病理学的因子、生体肝移植後肝癌再発形式及び予後について検討することである。対象はHCCに対し生体肝移植を施行した112例を検討した。 方法は提出しました書類にあるように①生体肝移植を施行されたHCC標本を用い、血管内皮マーカーであるCD34染色にて、類洞内皮に囲まれたHCC clusterの有無(VETC)を検討した。②VETCの有無と腫瘍マーカー、病期、脈管侵襲などの臨床背景因子を検討した。③VETCの有無と肝移植後全生存率、無再発生存率を検討した。結果は①VETC構造は17例(15.2%)にみられた。②VETC(+, 17例)と VETC(-, 95例)では、腫瘍径5cm以上(23.5% vs 7.3%, p<0.05)、分化度(n, 高分化:0 vs 10、中分化:7 vs 60、低分化:10 vs 25 ,p<0.05)、脈管侵襲有り(82.4% vs 33.7%, p<0.01)、術後病期(n, Ⅰ:0 vs 17、Ⅱ:1 vs 25、Ⅲ:8 vs 33、Ⅳa:8 vs 19, p=0.01)であり、VETC(+)では有意に腫瘍径が大きく、低分化で脈管侵襲があり、病期は進行していた。現時点では③5年無再発生存率、5年全生存率はVETC(+)とVETC(-)ではそれぞれ52.9% vs 85.0%( p<0.001)、70.1% vs 91.3%( p<0.01)と、VETC(+)群で有意に不良であった。
|