1) 特発性大腿骨頭壊死症に対して術前に造影MRIを施行し、関節温存手術中に関節液採取が可能であった症例を対象とした。術前の造影MRIではcoronal像における大腿骨頭頚部の内外側、axial像における大腿骨頭頚部の前側、後側での滑膜厚を測定し、その最大値を滑膜厚とした。関節液の測定項目は、炎症マーカーとして、血管攣縮との関与が示唆されているTNF-α、IL-6に加え、IL-1β、IL-8、MMP-3、MMP-9を測定、骨代謝マーカーとしてBAP、TRACP5bを測定し、滑膜厚との関連を比較した。滑膜厚は平均4.56㎜であり、滑膜炎とサイトカインレベルとの相関はIL-8、TRACP5bで有意に認めた。IL-8との相関は滑膜炎の血管新生を反映していると考えられ、滑膜炎が大腿骨頭壊死症における骨吸収の亢進に影響を及ぼしていることが示唆された。
2) 大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折の症例間で比較を行い、骨頭圧潰の程度が大きい症例のIL-8、TRACP-5b、VEGF、MMP-9が、骨頭圧潰がわずかな症例と比して有意に高値であることをつきとめた。さらに、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折および急速破壊型股関節症のHE染色骨頭標本を用いて軟骨下骨領域の骨梁周囲の多核巨細胞数を計測し、骨頭圧潰が高度な大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折および急速破壊型股関節症で有意に高値を示しており、破骨細胞活性が高値であることを確認した。また、骨梁周囲の多核巨細胞数は関節液中の破骨細胞活性の指標であるTRACP-5bと有意な相関を示しており、股関節液中の破骨細胞関連因子は疾患の破骨細胞活性を反映していると考えられ、今後の展望として股関節液を調査することが股関節疾患の病態解明につながる可能性が示唆された。
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