口腔インプラント治療の最大の目的は、咬合、咀嚼の機能回復であり、インプラント周囲骨が咬合力というメカニカルストレスに適正に応答することが求められる。インプラント体は骨に結合しており、咬合力が直接骨に伝達される。そこで、骨において機械的刺激を生物学的刺激に変換するメカノセンサーである骨細胞に着目し、骨細胞によるターゲットリモデリングがインプラント周囲骨代謝を担うと仮定した。 動物実験においては、ラット顎骨インプラント埋入モデルを確立した。ラット顎骨に純チタン製のスクリュータイプインプラントを埋入し、4週間の治癒期間後に、非荷重群、荷重群、過荷重群の3群を設定した。荷重を負荷すると、インプラント周囲骨におけるアポトーシスを起こした骨細胞の増加、TRAP陽性細胞の増加を認めた。また、骨細胞間の連絡機構であるconnexin43の発現が上昇し、骨芽細胞抑制性に働くsclerostinの発現が増加した。これらよりインプラント周囲骨においては、咬合力により骨代謝が活性化していることが示唆された。 また、培養実験においては、骨細胞様細胞株の三次元ゲル包埋培養を用いて骨細胞間の三次元ネットワーク構造を再現し、インプラントスレッド形態を模したチタンプレートにて反復刺激を負荷した。刺激を負荷するとRANKL、connexin43の発現を認め、動物実験の結果が裏付けられた。また、アポトーシスした骨細胞が刺激により増加しており、骨細胞によるターゲットリモデリングが関与している可能性が示された。
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