外胚葉異形成/皮膚脆弱症候群に関与するPlakophilin 1(PKP1)は細胞間接着に関与していることが知られているが、歯の発生における詳細な機能は不明である。これまでの研究で、PKP1はWnt刺激によって核内に移行し、転写調節因子として働く可能性を示してきた。今回は、Wntシグナル制御下でのPKP1の役割を解明することを目的として研究を開始した。 本年度は、PKP1のWntシグナル制御下での細胞内での局在の変化を、リアルタイムに検出するために、PKP1-GFP融合発現ベクターを作製し、研究を行った。歯原性上皮細胞株であるCLDE細胞にPKP1-GFPを遺伝子導入し、Ca2+にて刺激すると、PKP1は細胞膜に局在した。Wnt刺激後、タイムラプス蛍光顕微鏡でPKP1の局在変化を観察したところ、細胞膜に局在したPKP1が核内に集積する様子が観察できた。以上の結果から、PKP1はWnt刺激により細胞膜から核内へと移行し、刺激を伝える可能性が示唆された。さらに、レポーターアッセイにより、PKP1はTCF/LEFプロモータ活性を持つことを発見した。これらの結果から、Wntシグナル伝達因子であるbeta-cateninと同様に、PKP1がWntシグナル伝達因子として働いている可能性が示された。 以上の結果からTCF/LEF転写因子は転写調節因子であるbeta-cateninに結合するかPKP1に結合するかでその標的因子を変化させている可能性が示された。
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