ダークココアの経口摂取によって心血管系疾患の発症率が減少するとした大規模疫学研究結果が報告され、その主成分であるECによる心血管系疾患の抑制効果が注目されている。動脈硬化の進行に肥満が関与し、肥満が一種の慢性炎症であることから、ECの抗炎症作用の作用点として、脂肪細胞とマクロファージの相互作用が最も疑われる。以上から、脂肪組織における慢性炎症モデルにおいてECを作用させることで、肥満およびインスリン抵抗性が抑制されるとともに、歯周炎予防にも効果があるとの仮説を設け、ECと脂肪細胞・マクロファージ相互作用・歯周炎発症との関連を検討した。 ECで前処理した共培養系をLPS刺激すると、脂肪細胞からのccl19遺伝子発現が有意に抑制された。マウスにおいては、EC添加により高脂肪食負荷による体重・ 内臓脂肪量増加が抑制され、脂肪径の増大も観察されなかった。また、肝臓および脂肪組織における炎症関連遺伝子発現の抑制が確認され、高脂肪食負荷によるインスリン感受性低下の改善が認められた。 一方、LPS刺激下で共培養した歯肉線維芽細胞とマクロファージをEC刺激すると、歯肉線維芽細胞からのIL-1β、IL-6遺伝子発現およびTNF-αタンパク発現が有意に抑制された。また、HFDを摂取したマウスの歯肉組織においてND摂取群と比較し、CCL19、TNF-α遺伝子発現が有意に上昇したのに対し、HFD/ECを摂取したマウスの歯肉組織ではこれらの遺伝子発現が有意に抑制された。さらに、CCR7欠損マウスを用いた検討においてもKO/HFD群ではWT/HFD群と比較し、歯肉組織からのTNF-α発現が有意に抑制された。 以上、ECを作用させることで、肥満およびインスリン抵抗性発症が抑制されること、ECが脂肪組織や歯周組織の炎症にCCL19の発現抑制を介して効果を示すことが示唆された。
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