研究課題/領域番号 |
16H07069
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
阿南 光政 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80782359)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | 防災 / 流出解析 / 自然災害 / 洪水調節 / ハザードマップ |
研究実績の概要 |
筑後川流域の千代田地区をモデル地区に選定し,地形および土地利用条件の把握を行った.当該地区に関連する国営事業当時の事業計画資料,出来形図面,標高メッシュデータ,航空写真を用いてデータベース化を行った.これら地形条件の他に現在当該地区で実施されているクリーク改修計画に関する情報を収集することで,流出,氾濫解析シミュレーションのシナリオ条件を整理した.さらに当該地区で近年発生した豪雨被害に関する水文データを収集し,洪水発生要因及び溢水,浸水過程の分析を行った. 土地利用状況の分析結果と水文データをもとに,対象地域における降雨流出モデルを構築した.当該地区を対象としたシミュレーションモデルの検証の結果,平成24年度の九州北部豪雨時の洪水状況を再現することに成功した.さらに解析結果を詳細に分析した結果,クリークの改修進度とポンプやゲートといった水利施設の操作条件が洪水抑制に密接に関係していることを解明した. 洪水発生のメカニズムを視覚的に表現,視認する手法として,対象地区のうち,洪水被害が著しい区域となっている下流部を対象として、3次元化を試みた.地形モデル構築には国土地理院のサイトから入手可能な5mメッシュ標高を用い,主要な河川,クリーク,車道および住宅等の建物については現地状況及びオルソ画像を参考にして,3次元VRソフトウェア上でモデルを個別に配置した.これらの地形地物モデルに氾濫解析結果を重ね合わせることで,洪水による被害状況の把握および防災意識の醸成に有効な表現手法を構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択決定後,速やかに研究対象地区の検討に関する予備調査および選定を行った.対象地区として水文観測データが既存する地区を対象地区として選定したことで,短期間で十分なデータを収集することができた.このため,予定していたモデル構築,検証まで到達することができている.さらに,対象地区を包括する筑後川下流右岸地区において,地元の行政機関や水利施設の整備を担当する技術者と連携してワークショップを開催し,豪雨被害発生時の水管理体制の現状を把握することができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に構築したモデルを用いて,対象地区における複数の洪水時の状況の再現を行うことで,氾濫のプロセスと要因解明を行う.解析結果はVR技術を用いて時空間的(4次元)に視覚化するなど,社会・国民への発信方法を考慮する. 土地利用の変化が洪水発生の確率と規模に与える影響を検証する.具体的には,過去に発生した洪水の再現結果に対して,戦後の高度経済成長前の土地利用状況であれば果たして氾濫しなかったのか,土地改良事業が実施されたことで洪水がどの程度緩和されたのか,農村地域において耕作放棄地や農地転用が進んだことで,下流の都市部において氾濫の危険性が増しているのか,下流域での急速な開発,インフラ整備の充実は上流域に影響を及ぼしていないか,といった複数のシナリオを構築し,農村の洪水緩和機能を定量化する. 研究成果を実用化するための具体的手法として,氾濫シミュレーション結果についてGISを用いたデータベース化を行うことで対象地域における豪雨災害ハザードマップを作成する.ハザードマップには降雨の状況に応じて氾濫の危険性が高まる地域を表示することに加えて,避難を要する指標,避難場所,避難ルートを示す.
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