行動・心理症状(BPSD)が認知症高齢者の在宅療養生活を妨げると指摘されている.認知症高齢者の急増が予測されている2025年に向けて,認知症高齢者のBPSDへの対応は在宅医療推進の重要な課題である.本研究において,向精神薬によってBPSDの薬物療法を行っている認知症高齢者に対して,在宅療養生活継続に向けて訪問看護師が行っている判断を明らかにした. 向精神薬によりBPSDの薬物療法を行っている認知症高齢者に対し,サービスを提供している訪問看護事業所で勤務する看護師を対象とし,半構成的面接によるインタビュー調査を行った.インタビューはボイスレコーダーに録音し,逐語録を作成した.分析は,質的帰納的に行い,訪問看護師の判断に関する内容を1つの文脈として,意味の類似性からコード化を行った.意味の共通性からサブカテゴリ,カテゴリを生成した. 研究協力施設は3か所であり,男性1名,女性11名の訪問看護師に対してインタビュー調査を実施した.参加者の年齢は,30歳代が6名,40歳代が2名,50歳代が3名,60歳代が1名であった.看護師経験年数の平均±SDは20.8±9.1年で訪問看護師経験年数の平均は6.1±6.2年であった.分析の結果,31コードが抽出され,9サブカテゴリ,3カテゴリが生成された.以下,カテゴリを《》で示す.明らかになったカテゴリは,《向精神薬やBPSDの影響を考慮したBPSD悪化の予測》,《向精神薬やBPSDに伴う心身機能低下の見極め》,《家族のBPSDの対応に伴う介護負担および対応力の見極め》であった. 参加者は,向精神薬によりBPSDの薬物療法を行う認知症高齢者の在宅療養生活継続に向けてBPSD悪化の予測,心身機能低下の見極め,家族の介護負担とBPSD対応力を見極めていた.これらの判断には,向精神薬が認知症高齢者に与える影響を考慮していることが示された.
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