研究課題
レアメタルおよびレアアースメタルは、パソコンや携帯電話等のハイテク産業に必須の元素としてよく知られている。これらの鉱物資源は経済的な側面だけでなく、地球温暖化対策に向けた今後のクリーンエネルギー技術の普及に不可欠な”critical metal”として、注目を集めている。例えば、クリティカルメタルに属するネオジムは、永久磁石として自動車や風力発電のモーターに用いられる。コバルトはリチウム二次電池の正極材料として電気自動車やハイブリッドカーに使用される。プラチナは自動車排ガスの浄化触媒や、電子材料として幅広く利用される金属である。一方でこれらの金属は資源偏在性が高く、さらに現状ではそのリサイクルも非常に困難であるため、今後のクリティカルメタルの安定供給の重要性はさらに高まっている。しかしながら、こうしたクリティカルメタルの貿易構造の因子について分析した事例はなく、こうした背景のもと、当該年度は計量経済学のグラビティモデルを基礎とするネオジム、コバルト、プラチナの国際フロー構造の推定を行った。具体的には貿易国間の一人あたりGDPや人口、距離のほか、自動車やインターネット、携帯電話の普及率、再生可能エネルギーの総エネルギー比率、採掘に関するダミー変数を組み込んだモデルを検証した。結果として、ネオジムおよびプラチナフローについてグラビティモデルとの整合が統計的に有意に見られ、特にネオジムについては決定係数が大きかった。また、モデル改善に向けて必要な要素について検討した。さらに、当該年度では今後のシナリオアプローチとの関連性も踏まえ、日本の達成が義務付けられるパリ協定に基づく温室効果ガス削減目標に関する研究発表も行った。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度において、一人あたりGDPや人口、距離のほか、自動車やインターネット、携帯電話の普及率、再生可能エネルギーの総エネルギー比率、採掘に関するダミー変数に基づくネオジム、コバルト、プラチナの貿易フローを推計するグラビティモデルの構築を行った。それらの変数の統計的有意性を検証した論文を査読付き国際学術誌Resourcecs Policyに投稿し、受理されたことによる。
平成29年度は本モデルにおいて、さらなる変数の吟味とシナリオ予測の精緻化を行う。そのためには、モデルおよびレアメタル消費と関連する将来シナリオの構築が必須である。ここでは今後の低炭素社会構築の推進に伴うレアメタル需要の逼迫を考慮し、IPCCのRCP ScenariosやIEAのBLUE Map Scenarioを参考にしながら、2005年をベンチマークとする2050年までのレアメタル国際フローの推計値を提示する。また、推定結果と昨今注目を集める欧州Circular Economyの観点から、レアメタルの安定供給に重要な資源戦略の方策について検討する。さらに、パリ協定目標と日本のレアメタル利用のトレードオフの可能性についても検証する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Resources Policy
巻: 52 ページ: 107-113
10.1016/j.resourpol.2017.02.004
Economic Systems Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1080/09535314.2017.1295923