KPU-300存在下にSAS-Fucci細胞をタイムラプス撮影すると、確かに多くの細胞が死ぬものの、KPU-300抵抗性のSAS-Fucci細胞も少なからず混在している。コロニーを形成する細胞は、G2/M期を示す緑色細胞が多い傾向は認めるものの、死んだ細胞は一塊にまとまり、その直下もしくは周囲から絶えず細胞が増殖する様子がみられ、最終的にはHeLa-Fucci細胞でのタイムラプス像に見られたようなM期で同調する様子は見られなかった。さらに、この現象はSAS-Fucci細胞にモノクローナル抗体であるCetuximabを作用させた場合においても認められたことから、KPU-300特異的な現象ではないことが分かった。詳細を見てみると、Cetuximab存在下にSAS-Fucci細胞の培養を開始し、5日程度までは単調に増殖してコロニーを形成するが、それ以上コロニーは増大しなかった。また、Cetuximab群では、投与120時間経過時には、コロニー内の大半の細胞がG1期で停止していることが明らかとなった。両者にはG2/M期の緑色細胞優位となるかG1期の赤色細胞優位となるかの違いはあるものの、コロニーの動態としては同様の現象である。この現象を解明し、放射線抵抗性であるG1期を脱する因子が解明されれば、KPU-300WAを併用して放射線感受性であるM期へ細胞周期を同調させる方法が可能となり、今後の検討課題としている。
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