研究課題/領域番号 |
16H07077
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
米嶋 枝里香 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (20779566)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | TFEB / リソソーム / 脂肪細胞 |
研究実績の概要 |
TFEBは脂肪細胞分化への関与について 最近リソソームの新しい機能として、低栄養状態と富栄養状態を認識して、種々のシグナルを発することが知られている。リソソーム内の低いアミノ酸レベルを認識するV-ATPase は、Ragタンパク質を経由して、栄養センサーであるmTORC1へとシグナルが伝達し遊離状態となるこの時にTFEBが遊離して核内で転写され活性化する。しかし、富栄養状態ではmTORC1は活性化したままでRagと複合体を形成する。この状態ではTFEBの転写は起こらない。未分化間葉系細胞は骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞へ分化すること、さらに富栄養状態が続くと骨芽細胞が減少し、脂肪細胞が増加することを考えれば、TFEBが制御するリソソームの富栄養と低栄養状態の認識機構が直接的に骨芽細胞と脂肪細胞の分化誘導に関与するのではないかと考えられた。
TFEB過剰発現による脂肪細胞への分化への影響 TFEBの過剰発現細胞を用いてマウス胎仔由来の線維芽細胞 3T3-L1あるいは骨髄細胞を脂肪細胞と分化誘導した。分化誘導試薬(インシュリン・ 3- イソブチル-1- メチルキサンチン・デキサメタゾン)分化培地を用意した。(血清を含むDMEM 培地 10 ml に対し添加試薬(1)インシュリン 100 μl と(2)デキサメタゾン 50 μl と(3)イソブチルメチルキサンチン 10 μl を添加した)2. 100 % コンフルエンス状態になった2 日後に分化培地に交換し、48 時間(2 日)培養した。3. 分化培地を除去した後、必要であれば維持培地(血清を含むDMEM 培地 10 mlに対し添加試薬(4)インシュリン 100 μl 添加)に交換して5 ~ 10 日間培養した。予想通り、TFEB過剰発現細胞により脂肪細胞への分化することが分かった。今後は分子メカニズムについて解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TFEBの過剰発現細胞の構築は骨芽前駆細胞での経験から容易であった。マウス胎仔由来の線維芽細胞 3T3-L1を用いてを作成し、脂肪細胞と分化誘導した。予想通り、TFEBを過剰発現させるとコントロール細胞と比べて脂肪細胞への分化した。種々のマーカー遺伝子も殆ど過剰発現細胞で増大していた。今後は分子メカニズムについて解析する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらにTFEB過剰発現細胞による軟骨細胞への分化への影響を解析する。 具体的にはラット鼻中隔軟骨から分離した初代軟骨細胞を用いる(コスモバイオ社)。本細胞にアデノウイルスベクターを用いてTFEBを発現させる実験系を確立する。成熟軟骨細胞は、コラーゲンType II、IX、XIやプロテオグリカンなどの細胞外マトリクスを産生する。軟骨細胞の細胞外マトリクスを染色するAlcian Blueによって分化の程度を比較する。またリアルタイムPCR法によって軟骨細胞分化マーカーであるALP 、Col2α、Col10α1、VEGF、MMPsを用いて過剰発現細胞はマーカー遺伝子のレベルが増大していうことを確認する。
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