研究実績の概要 |
常染色体優性遺伝性GH1遺伝子異常症のGH分泌不全発症機序を解明するため、マウス内在性Gh遺伝子を、1コピーずつのヒト野生型GH1遺伝子、ヒト変異型GH1遺伝子に置換したモデルマウスを作製し、ヒト本症患者の臨床症状に酷似した表現型を得た。本症の発症機序として、①野生型GH-変異型GHのヘテロダイマー形成説、②小胞体ストレス説が知られているため、それぞれついて検証を行った。 ①ヒト本症モデルである野生型GH1/変異型GH1(WT/Δ3)マウスでは、電子顕微鏡写真上粗面小胞体の著明な増殖、および細胞質の巨大タンパク凝集体などの細胞内オルガネラの異常が認められた。さらに、変異型GH1/KO(Δ3/-)マウスという、体内で変異型GHしか産生されないマウスを作製したところ、全く同様のオルガネラの異常が認められたことから、本症発症には野生型GH-変異型GHのタンパク相互作用は必須ではないということが明らかになった。 ②Δ3 GHは小胞体に局在することが知られていることから、申請者らはモデルマウス(WT/Δ3)下垂体および健常コントロールモデル(WT/WT)下垂体の両者で小胞体ストレス応答について検証を行った。その結果、WT/Δ3では哺乳類の主要3系統の小胞体ストレス経路(PERK, ATF6, IRE1)がすべて活性化されていることが示され、変異型GHが小胞体ストレスを起こしていることが明らかになった。しかしながら、その程度は軽度であり、TUNELアッセイにてアポトーシスが認められなかったことから、小胞体ストレスもGH分泌不全の直接の原因にはなりえないことが明らかになった。 以上より、本症は従来考えられていた説とは全く異なった機序で発症していることが明らかとなった。
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