研究課題/領域番号 |
16H07083
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
山岡 真美 大分大学, 医学部, 特任助教 (10783847)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 糖尿病 / 生体分子 / 蛋白質 |
研究実績の概要 |
本研究では、膵B細胞におけるpHコントロールを解析することで、インスリン分泌を終えた小胞にインスリンを再充填するメカニズムの解明を目指す。この再充填機構は、膵B細胞を疲弊させることなく、インスリンを長期間にわたって放出し続けるために必須であり、その破綻は2型糖尿病の新たな原因となりうる。しかし、これまでの研究では生合成されたインスリンを放出するまでを扱い、その後のステップを扱った研究は皆無である。本研究は、開口放出後に活性化されるGタンパク質とプロトンポンプの結合調節と機能制御を解析することで、インスリンを再充填するメカニズムの解明を行う。申請者は、本研究が新しいタイプの糖尿病治療薬を開発する基盤になりうると考えている。 平成28年度は、Gタンパク質がプロトンポンプとの複合体形成と活性に及ぼす影響を検討した。免疫沈降実験より、Gタンパク質がプロトンポンプと細胞内で複合体を形成することを明らかにした。さらに、精製タンパク質を用いたin vitro binding assayより、その結合が直接であることを明らかにした。また、Gタンパク質とプロトンポンプの結合を抑制した細胞では、エンドサイトーシスされた小胞内の酸性化が抑制された。 以上の結果より、インスリン分泌を終えた小胞内でpHをコントロールする分子メカニズムの一端が明らかになった。本研究成果は、次年度以降に行うGタンパク質の活性制御機構の解析を理解する上で極めて重要であると共に、膵B細胞のエンドサイトーシスシグナリングという意味からも基礎生物学上重要な知見である。従って、本年度の研究計画は、当初の計画以上に進展していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、インスリン分泌を終えた小胞内でpHを制御するメカニズムを、以下に従って解析する予定である。 平成28年度:Gタンパク質がプロトンポンプとの複合体形成と活性に及ぼす影響を検討する。 平成29年度:プロトンポンプを再構成するシグナルの上流を解明する。 本年度は、Gタンパク質がプロトンポンプを介してインスリン分泌を終えた小胞内のpHを制御することを明らかにした。従って、本年度の研究計画は、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、前年度の成果を基盤にGタンパク質の活性化シグナルの解明を試みる。1) GAPをリガンドとしたアフィニティカラムに膵B細胞の抽出液をアプライし、結合タンパク質をマス解析により同定する。2) 精製タンパク質を用いた結合実験より解離定数(Kd)を算出し、結合が直接かつ特異的であることを示す。3) グルコース刺激前後の細胞から調製した抽出液をゲル濾過クロマトグラフィーとショ糖密度勾配遠心法で分画し、GAPと同定した分子の結合形態や結合様式を解析する。4) 同定した分子がGタンパク質の変換に及ぼす影響を、in vitro GAP assayとpull down assayにより評価する。5) 細胞をグルコースで刺激し、各タンパク質の細胞内動態を共焦点レーザー顕微鏡や全反射蛍光顕微鏡(TIRF-MS)、超解像度顕微鏡(STED-MS)を用いたライブイメージングにより解析する。6) 同定したタンパク質のドメイン構造を指標に複数のフラグメントを作製し、GAP結合部位を同定する。さらに、結合部位より各種変異体の作製を行う。7) siRNAや上記変異体を細胞に導入し、各タンパク質の局在や動態に及ぼす影響を検討する。エンドサイトーシスに及ぼす影響は、フォグリン抗体の取り込み実験やエンドサイトーシスマーカーFM4-64により解析する。pHに及ぼす影響は、pH感受性の蛍光指示薬や蛍光タンパク質を用いて評価する。
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