本研究では、ドイツの詩学・哲学思想の研究史において等閑視され続けてきた、ドイツロマン主義詩学と模倣概念との積極的な関係を究明するために、初期ロマン派の思想家フリードリヒ・シュレーゲルの批評理論の解明に取り組み、この理論の中に模倣の構造とモチーフが存在していることを明らかにした。その過程で、シュレーゲルの模倣思想の意義が異文化理解的な観点から検討され、さらに、彼の汎神論的な世界観と個体概念を基礎とした構想「文献学の哲学」の内容が探求された。また、彼の模倣的な批評の前提となっている歴史哲学の中で大きな役割を果たしている機知の概念の意味についても解明された。
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