研究実績の概要 |
本研究は、二つの星が互いの周りをまわっている双子の星「連星」がどのように形成されているのかを明らかにすることを目的とする。形成途上の連星「原始連星」の周囲では、分子ガスと固体微粒子からなる円盤「周連星系円盤」が存在する。この周連星系円盤が中心の原始星連星に物質を供給し、連星を成長させる源であると考えられている。本研究では、究極のミリ波、サブミリ波電波望遠鏡「ALMA望遠鏡」を用いた周連星系円盤の観測を行い、周連星系円盤の物質が中心の連星系に落ち込んでいく物理過程を明らかにする。 前年度は連星の質量比0.2の原始星連星L1551 NEのALMA観測を行い、周連星系円盤の渦巻き構造や、中心の連星に物質が落ち込む運動を明らかにすることに成功した。今年度は、連星の質量比が1、つまり同じ質量の原始星連星であるL1551 IRS 5 のALMA 観測を行った。その結果、L1551 NE の場合と異なり L1551 IRS 5 の周連星系円盤には優位な渦巻き構造が見えられないことが分かった。また円盤のガスの運動は重力と遠心力が釣りあった回転運動「ケプラー回転」をしていることもわかった。今後の詳細解析により、ガスの運動のケプラー回転からのずれ、すなわち中心の連星系への物質の供給の運動を調べていく。 また今年度は、ALMAですでに観測がなされている既存のデータ「アーカイブデータ」を検索して、他の原始星連星のデータ解析も進めている。L1551 IRS 5, NE に比べてより進化段階が進んだ連星 XZ Tau においては、非対称なガスの分布、運動を見出した。 今後、L1551 IRS 5 のALMAデータについては早急に論文を出版するとともに、XZ Tau など他の連星のALMA データについては、学生の卒業研究、修士論文としてまとめたのち、学術論文化していきたい。
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