林業の活性化や地球温暖化の抑制の観点から、建物への積極的な木材の利用が国策として進められている。特にCLT(直行集成板)に代表される「塊」としての木材の利用が注目を集めている。本研究では、木の材料特性を活かした付加価値の高い「多機能CLT」の開発を行う。 研究期間(2年)を5つのステップに分け、1)CLTに関する体系的調査、2)CLTの多角的評価、3)適材適所なCLTの使用と材料としての発展可能性(=多機能化)の考察、4)試験体による性能検証、5)多機能CLT試作品の作成と成果のまとめ、の流れで研究を行った。平成29年度は4)と5)に取り組んだ。 昨年度の成果からCLTの断熱性能と耐火性能の向上に注目し、遅燃や断熱性能が期待出来る低比重木材や炭化、多孔加工したラミナに加え、燃え止まりの期待出来る高比重木材や不燃処理されたラミナを組み合わせた小型試験(450mmx450mm)を製作し、加熱および熱貫流の予備試験を行った(現在も進行中)。加熱試験では、遅燃・断熱層に用いた各ラミナの燃焼抑制効果や構造層への熱の伝わりを確認した。熱貫流の試験では、各層を移動する熱流を測定し、ラミナ構成による部材の熱的性能の変化を検証した。 また、木材の利用促進に関連する木質資源の問題についても、日本国内、及び同量の森林資源を有するフィンランドとドイツ国内の状況について、主に統計データをもとに定量的な把握を行い、CLTのような新しい木質材料の活用に関して別の視点からの考察も行った。 今年度の成果をもとに、耐火・断熱効果の高いラミナ構成を選定し、引き続き小型試験隊による詳細な予備試験を行っている。来年度は、中型の試験を用いた加熱試験と熱貫流試験を行う予定である。
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