研究課題
本研究では、長期絶食・経静脈栄養管理においてグレリン投与が肝臓、消化管に与える影響を明らかにし、腸肝不全関連肝障害の抑制や残存腸管順応促進に関し新たな周術期管理法を見出したいと考えている。具体的には以下の3点を予定している。(Ⅰ)長期絶食・経静脈栄養管理を動物モデルで確立し、グレリン投与が肝臓、消化管にどのような影響を与えるかを明らかにする。(Ⅱ)大量小腸喪失、術後絶食経静脈栄養管理を動物モデルで確立し、術後の腸肝不全関連肝障害の予防および残存腸管順応にグレリンがどのように関わるかを明らかにする。(Ⅲ)これらの結果をもとに、グレリン補充療法について至適量、至適時期を検討し、新たな術後管理法を開発する。本年はまず長期絶食・経静脈栄養モデルラットのモデル動物の確立を行った。7終齢のSDラットに対し外頸静脈よりカテーテルを挿入し、24時間の持続点滴を行い絶食管理した。最終的には安定した14日間の経静脈栄養管理に成功しており、動物モデルが確立したと考えている。また確立したモデル動物に対してグレリンを投与し、長期絶食・経静脈栄養の合併症である腸管絨毛の萎縮や肝障害に対する効果について検討した。とくに空腸において絨毛高および陰窩深の萎縮の予防を認めた。腸肝不全関連肝障害の予防において、腸管順応は極めて重要である。腸管順応を促進できれば、より早期に経腸栄養が可能になり、静脈栄養から離脱できるからである。また長期絶食は腸管粘膜の萎縮をもたらし、その後の栄養吸収低下につながる。腸管のバリア機能が低下し、Bacteria Translocationによって引き起こる敗血症を合併するリスクが高まる。今回の実験によって、グレリン投与が長期静脈栄養の合併症である絨毛の萎縮に対して有効な治療法となり得る結果が得られ、長期経静脈栄養管理において有用である可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
7終齢のSDラットに対し外頚静脈へのカテーテルの挿入を行い、長期絶食・経静脈栄養を行った。ヒトの平均寿命は68歳(WHO2012)であり、ラットの平均寿命は725日である。ヒトの約1年間に相当する14日間をモデルラットの長期絶食期間として設定し、観察を行った。最終的には安定した14日間の経静脈栄養管理に成功しており、動物モデルが確立したと考えている。14日間の長期絶食・経静脈栄養後には、腸管絨毛の萎縮が見られた。肝臓における組織学的な変化は認めなかった。また確立した長期絶食・経静脈栄養モデルラットに対してグレリンの投与を行い、腸管絨毛の萎縮の予防について検討を行った。とくに空腸において絨毛高および陰窩 深の萎縮の予防を認め、グレリン投与群においてCCPRの増加が見られた。
確立した長期絶食・経静脈栄養モデルラットに対し、大量腸管切除を行い、80%短腸ラットモデルを作成する。大量腸管切除後の長期絶食・経静脈栄養管理における肝障害、残存腸管の腸管順応の程度を、グレリン投与群と非投与群で検討する。
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