研究課題/領域番号 |
16H07091
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
別府 真広 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助手 (00363648)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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キーワード | CTC / 口腔癌 / 液状細胞診 / 流体力学を用いたCTC分離 |
研究実績の概要 |
悪性腫瘍の経過中に血管やリンパ管に腫瘍細胞が侵入し、転移を起こすことが知られており、転移巣の治療は困難を極める。近年、担癌状態患者の血液中に循環癌細胞(Circulating Tumor Cells; CTC)が存在していることが明らかになり、また口腔および咽頭癌で癌化学療法中のCTCの存在が予後と極めて強く相関することが示され、頭頸部領域においてもCTCがリンパ節転移や遠隔転移に関与していることが示唆された。このような経緯から、頭頸部癌においてもCTCの研究が急速に進み、分離・分取が可能となってきた。CTCの分離は従来、細胞表面のマーカー(例えばEpCAM)による分取が主に用いられてきたが、本研究協力者の富山県工業技術センターの高田、大永らは、マイクロ流路と抗体によってCTCを高感度かつ簡便に捕捉できるポリマー製CTC分離デバイスおよびその低コスト製造法を開発した。(Takata K, et al. Biomed Microdevices. 2013 Aug;15(4):611-6).しかしながら、細胞表面のマーカーに依存する方法では、上皮間葉転換(EMT)によりマーカーが減少・消失した癌細胞を分離できないことから、高田らはさらに、特定の細胞表面マーカーによることなくシンプルな流体力学により血液中のCTCを分離・回収するポリマー製CTC分離デバイスを開発した。この方法によれば血液もしくは体液をそのままサンプル化して生きたまま口腔癌CTCの分離を行うことができる。 (尾静脈腫瘍接種モデルからのCTCの分離の検証) マウス尾静脈から蛍光ラベルした口腔癌細胞株を接種した。接種後数時間後に採血を行い、上記の分離装置に通過させる。CTC画分とそれ以外の画分における蛍光ラベルされた細胞を確認することにより、CTC分離効率を検証した。現在回収したCTCを培養に移行する条件設定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
我々は腺様嚢胞癌細胞株ACCSにGFPを導入した細胞系でマウス舌に腫瘍を形成させ、頸部リンパ節及び肺に転移形成する転移モデルを確立している(K.Ishii and T.Sugiura. Int. J. Oncol. 2011)。当初は28年度中にこのモデルを用いて舌に腫瘍形成したマウスの血液中からCTCが分離可能であるか検証する予定であったが、現在は転移モデルを作成し、同モデルにおけるCTC分離を試行している段階である。マウスの尾静脈腫瘍接種モデルからのCTCの分離の検証をおこなう前のパイロットスタディーの段階で、本研究の中心となるポリマー製CTC分離デバイスを用いる際の条件設定や回収効率の検証に時間を要したため、当初予定していた研究目標に比して大幅な遅れが生じたものと推測する。
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今後の研究の推進方策 |
マウス舌にGFPを導入した腺様嚢胞癌細胞株ACCSを接種して、頸部リンパ節及び肺に転移形成する転移モデルを用いて、舌に腫瘍形成したマウスの血液中からのCTC分離が確認されたら次の研究に移行する。 すなわちCTCは非接着性でいわゆるセネセンスの状態にあり、もっとも幹細胞性の性格を持っている可能性が高いため、上記の転移モデルを用いて親株・CTCの間でマイクロアレイによる遺伝子発現比較を行う。セネセンスにある状況の細胞はもっとも抗がん剤の感受性が低く、結果的に遺残して後発転移や遠隔転移の原因となるため、親株・CTCに対する抗がん剤感受性の比較検討を行う。 このモデルが確立すれば、患者からの血液中のCTC分離へ発展させる。
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