研究実績の概要 |
本研究の目的:本研究は膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)の発生メカニズムに基づき、質の高いトランスレーショナルなvalidationのなされた新規マーカーを確立することを目的としている。研究代表者は、IPMNを発生する新しい遺伝子改変マウスモデルを作成し、原因変異遺伝子によって制御される分子群を同定した。これらの分子群に関してヒトIPMNの診断、病勢把握、治療におけるマーカーとしての有効性を研究する。 1. マウス実験系における解析 研究代表者が作成した遺伝子改変マウスは、任意のタイミングで原因変異遺伝子の発現を誘導できるため、原因変異遺伝子発現後の膵組織の変化、IPMN発生過程を組織学的に追跡し、分子群の免疫染色を行った。マウスにおける免疫染色の結果から、インターロイキン(IL-)1ファミリーとSRY-box (SOX)転写因子をヒト実験系における重点的な解析対象として同定することができた。 2. ヒト実験系における解析 当学IRBの承認を得て、当科におけるIPMN切除例のデータベースを作成した。2005年から2016年までの連続切除例85例に関して臨床病理学的所見の確認、予後の調査を行った。作成したデータベースを基に、腺腫症例と浸潤癌症例のH-E染色による組織所見を再検し、典型的な症例を抽出し免疫染色による解析を施行した。また、研究代表者が以前に膵切除標本から確立した正常ヒト膵管上皮細胞モデル(Yamaguchi H, et al. Am J Pathol 177, 2010)に関して、当学IRBの承認が得られ、培養系の確立を再開し、分子群の発現に関するin vitroの解析を開始した。
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