本研究は、嗅覚情報と視覚情報という複数の知覚情報による「マルチモーダル干渉」に着目し、嗅覚刺激と視覚刺激が一致する際の知覚情報の影響(正の効果)並びに、嗅覚刺激と視刺激間の不一致による影響(負の効果)について検証することで、知覚情報の処理過程における嗅覚と視覚情報間の相互関係を明確に表す「マルチモーダル評価モデル」の提案、並びに、視覚情報における嗅覚刺激の活用に関する有効性の検討を目的とする。H28年度には、知覚情報間干渉に着目した評価モデルを提案する為に、嗅覚刺激と視刺激間の一致および不一致による(1)視覚情報に対する嗅覚情報の影響(2)色と形間の影響について検証した。具体的には、4種類の香り(シトラス類、フローラル類、ハーブ類及びウッド類)を用いて、味覚評価関連項目(甘さ、爽やかさ、酸っぱさ)視覚評価関連項目(重さ、明るさ)とともに好み、経験の有無との関連性について評価した。結果、嗅覚知覚における視覚情報の干渉は、好みや経験有無による影響はなく、視覚関連評価および味覚関連評価に影響することが分かった。H29年度には、当初予定した計画に(色と形の視覚要素間の干渉における知覚優先順位およびバイアスの影響検証)(3)嗅覚刺激のみの評価および視覚刺激のみの評価を検証に加え、嗅覚と視覚情報の影響の程度を定量化することで、嗅覚刺激と視覚刺激間の一致程度が知覚情報の評価に影響するか、影響するとしたら知覚情報の評価にどの程度の一致(もしくは不一致)条件から影響するかについて明確にすることを目指す。
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