研究課題
役に立たないようなモノであっても過剰に入手し、捨てることができない行動と、その結果として居住空間がモノであふれかえった状態を総称してためこみ (hoarding) と呼ぶ。ためこみ症の初発年齢は青年期であり、ためこみ症とはいえないまでも、ためこみ癖を有する人々の臨床的特徴に注目し、早期介入を計ることが求められる。わが国では、資源(ごみ)屋敷のイメージが先行し、ためこみ症/癖に対する理解は十分ではない。欧米では、セルフヘルプ書籍が出版されており、これを用いた治療効果研究も実施されている。セルフヘルプ書籍を用いた治療は、気軽に取り組め、治療に対する抵抗感が少ないためドロップ・アウトが少ないというメリットがある一方、専門家によるガイドがないために治療効果に乏しいというデメリットがあることが明らかになっている。そこで、本研究では、セルフヘルプ書籍による治療のメリットを生かしつつもデメリットを解消するために、遠隔地であっても専門家とつながることができるe ラーニングシステムを用いた認知行動療法プログラムを構築する。平成28年度は、eラーニングプログラムの効果判定に用いる尺度開発を行った。Hoarding Rating Scale-Self-Report (HRS-SR) はためこみ行動の重症度を5項目で測定可能な尺度である。大学生に対する調査とWeb調査を行い、因子構造、信頼性、妥当性の検討を行った。その結果、インターネット上で簡易に、ためこみ行動の重症度を測定できる日本語版HRS-SR (HRS-SR-J) が開発された。次年度以降、HRS-SR-Jを用いて、ためこみ癖に対するeラーニングプログラムの効果検討を行う予定である。
3: やや遅れている
平成28年度までに、eラーニング・プログラムの元となる書籍の訳出を行い、インターネット上で動作するプログラム開発に着手する予定であった。しかし、インターネット上での回答の利便性を考えて、5項目でためこみ行動の重症度を評価できる簡便な尺度 (HRS-SR-J) の開発を先に行う必要が生じた。また、eラーニング・プログラムの開発については、書籍の邦訳出版に時間がかかったため、当初より3ヵ月程度遅れている。
上記の遅れはあるものの、HRS-SR-Jの開発は終了し、介入試験のアウトカムとして使用可能な状態となった。また、現在、eラーニング・プログラムのコンテンツ作成を行っているところであり、平成29年6月に完成予定である。今後は、まず、平成29年6月中に予備的なユーザビリティ評価を行う。次に、7月~10月までの間、ためこみ癖を有する参加者を募り、新たに開発したためこみ癖のためのeラーニング・プログラムの介入試験を実施する。その後、解析を実施し、成果成果発表を行う予定である。
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Neuropsychiatric Disease and Treatment
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